アルゼンチン元大統領の有罪判決確定、今後の選挙への影響

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2025年06月20日

アルゼンチン最高裁判所は6月10日、南部サンタ・クルス州での道路の公共工事を巡る汚職の罪で、クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル(CFK)前副大統領(元大統領)の有罪判決を確定した。詐欺的な行政運営を行った罪により、自宅軟禁6年、公職終身禁止、約848億アルゼンチン・ペソ(約7,000万ドル)の資産没収の刑が確定した。

最高裁判決の今後の選挙への影響について、6月11日にトルクアト・ディ・テラ大学のフアン・ネグリ国際政治部長に聞いた。

(問)今後、CFKへの熱狂的な支持が再び生まれる可能性はあるか。

(答)CFK支持層による感情的な反応が起こる可能性はあるが、選挙への影響を持つような「熱狂的な支持」になるとは考えにくい。CFKは依然として忠実な支持層を持つが、それと同時に、彼女に拒否反応を示す層も広く存在する。ペロン主義にとってのリスクは、この反応を政治的資本と誤認してしまうことだ。そうなると、ハビエル・ミレイ現大統領が必要とする対立軸、すなわち「過去」対「未来」が再び活性化されてしまう。つまり、「熱狂的な支持」ではなく、「刷新」がなければ、ペロン主義の選挙での限界が再確認される可能性が高い。

(問)彼女の公職追放は選挙結果に影響するか。政府にとって有利に働くか。

(答)現在の政治バランスを大きく変えることはないと思われる。彼女には実際、ミレイ政権に対抗する勢力を率いて選挙に勝利するほどの競争力はなかったからだ。彼女の選挙での影響力は、政治的消耗、国民の拒否感、支持層の拡大能力の欠如によって大きく制限されていた。彼女の姿勢はむしろ、ブエノスアイレス州知事のアクセル・キシロフ氏との主導権争いの側面が強かった。今回の有罪判決により、政府は「理想的な敵」を失うことになる。ただし、ペロン主義がCFKに固執するならば、ミレイ氏に有利に働く。なぜなら、CFKが実際に選挙に出なくても、「機能的な敵」が復活するからだ。

(問)ペロン主義内部で権力の再編は起こるか。

(答)可能性はある。実際、この判決は分裂していたペロン主義に一時的な団結を生み出した。長期的にはCFKの中心的な役割を終わらせ、リーダーシップを刷新し、ブエノスアイレス州中心の指導体制から脱却することを考えるだろう。これは、ペロン主義が長い間実行に移せなかった課題だ。ペロン主義はこのチャンスを生かせるか、それとも慣れ親しんだレトリックに後退してしまうかが注目点だ。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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