米シカゴ連銀経済報告、4~5月前半は関税措置受けた駆け込み消費が引き続き増加
(米国)
シカゴ発
2025年06月09日
米国連邦準備制度理事会(FRB)が6月4日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック、注1)で、米国中西部の一部地域(注2)を管轄するシカゴ連銀は4月から5月前半にかけての同地域の経済活動について、わずかに(slightly)増加したと報告した。関係者は、今後1年間は経済活動のわずかな(slight)減少を予想している。
同地域の経済活動を分野ごとにみると、雇用は控えめに(modestly)増加した。関係者は今後1年間も同様のペースで雇用増加が続くと見込んでいる。建設業や製造業の一部の関係者は、熟練労働者の確保の難しさや、新規採用者を獲得するための賃金引き上げなど、引き続き厳しい労働市場に直面していると報告した。
個人消費は、報告期間を通して控えめに(modestly)増加した。自動車を除く小売り売り上げは、関税措置への懸念から、コンピュータ、電子機器、家電製品など、高額商品への支出が前倒しになり、控えめに(modestly)増加した。自動車販売も、関税措置を想定した消費者の駆け込み消費によって、堅調な(robust)伸びを維持した。
企業支出は横ばい(flat)だった。資本支出は低水準からわずかに(slightly)増加し、2026年にかけての見通しはわずかに(slightly)上向きとなった。小売業の関係者は、在庫は安定していると述べたが、5月半ばに中国に対する追加関税率が引き下げられた後に中国からの輸入注文が急増したため、製品の納入が予定どおりに行われるかどうか懸念を示した。製造業では、原材料不足に関する報告は引き続き少なかったが、関係者の一部は関税引き上げを受けて輸入品不足の可能性を懸念した。
製造業の需要はわずかに(slightly)減少した。重機械業界からの需要が鈍化したものの、鉄鋼の受注は増加した。金属加工製品の需要は、自動車業界からの需要減少を航空宇宙業界の需要増加が相殺したことによって横ばい(flat)となった。自動車業界からの需要が引き続き減少したことに伴い、機械の販売も控えめに(modestly)減少した。
2025年の地区内での農業所得の見通しは、農作物関連の貿易に関する不確実性が残る中、わずかに(slightly)増加した。畜産業の収入見通しは上昇したが、農業では横ばい(flat)だった。トウモロコシ価格は下落し、大豆価格は上昇した。豚、牛、乳製品の価格は上昇し、卵の価格は下落した。新規農業機械の販売は、価格が高水準のため限定的となった。
個々の調査対象項目の詳細は添付資料表参照。
(注1)連邦公開市場委員会(FOMC)の開催に先立ち、年8回公表されており、銀行からの報告やビジネス関係者などの声を基にまとめたもの。
(注2)アイオワ州、イリノイ州北部、インディアナ州北部、ウィスコンシン州南部、ミシガン州南部。
(星野香織)
(米国)
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