経済産業省による中東経済に関するセミナー開催

(中東、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、イラン、イラク)

調査部中東アフリカ課

2025年05月14日

ジェトロは512日、中東経済に関するセミナーを開催し、経済産業省の通商政策局中東アフリカ課課長の渡邉雅士氏が中東諸国の近況について、講演を行った。

写真 経済産業省渡邉氏の講演(ジェトロ撮影)

経済産業省渡邉氏の講演(ジェトロ撮影)

エネルギー安全保障の観点から重要性は不変

日本の原油輸入先国は2023年までサウジアラビアが首位だったが、2024年はアラブ首長国連邦(UAE)が首位となった。3位のクウェート、4位のカタールなど含めて中東の割合が高い(2024年の中東依存度95.4%)。

OPECプラスは減産していた原油生産を最近、増産に転じ、足元では油価は1バレル当たり60~65ドルで、これは過去の120ドルや130ドルという高い時期と比べると、半分程度だが、生産コストを比較すると、サウジアラビアの競争力は依然として高いと指摘した。2025年1月には、武藤容治経済産業相がサウジアラビアとUAEを訪問したが、要人往来を重ねてエネルギー安全保障を強化しながら、脱炭素、eスポーツ、医療、宇宙など、幅広い分野で、日本企業の有する技術を紹介していると説明した。

湾岸諸国では経済も安定

中東では、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ侵攻以降、「不安定な地域」として報道が目立つ。一方で、地域大国間の緊張の継続により、近年は「安定した」と称される時期はない。細かな報道に惑わされず、ある程度の不安定な状況を前提として、ビジネス機会を開拓することや、現地に赴いて実際の様子を見ることが重要とした。

中東諸国と日本は、首脳や閣僚の往来もあり、良好な経済関係があると紹介した。湾岸諸国にはフライトも多く発着しており、特にUAEやサウジアラビアなどの湾岸諸国は、国外からの投資とインバウンドで経済が支えられている面もあり、地域情勢を安定させたい意向があると述べた。

幅広い可能性

講演では、2025年1月から3月に訪問した国々の様子も紹介した。サウジアラビアでは日本のアニメやゲーム、コンテンツなどが注目されており、日本に進出し、日本企業とサウジアラビア向けコンテンツを制作する同国企業も出ていると説明した。UAEでは脱炭素や宇宙など先端技術の感度も高いという。これらの国はイノベーション創出に熱心で、新たな技術や商品の実験場としても適していると指摘した。

イランでは、街並みを見ると、米国制裁下でもテヘランではモノはあふれており、人々の生活もにぎわっているとし、「核合意」に向けた米国との間接協議の進展に注目したいとした。イラクは、直近の10年で大きく変化しており、バグダッド見本市の視察では会場規模も広く、日系企業や現地財閥を含む多くの企業がブースを出展しており、来客数も多かったという。国民の購買意欲が高く、日本車の販売も多いと説明した。

イスラエルでは、日本を含むアジア人を見かけることが減る一方で、欧米からのエンジニアなどの流入は変わっていない。イスラエルは技術開発に強みがあり、日本企業にはその技術を組み込む製造現場を有していることに協業の可能性があると言及した。また、パレスチナ(ヨルダン川西岸)の一部では、カタールや米国からの資本流入による都市開発が進んでおり、米国から戻ったパレスチナ人による先進技術スタートアップの地区があることも紹介した。

さらに、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)では、中東諸国のナショナルデー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが開催される予定で、日本で各国事情を知ることができる機会だと紹介した。

(井澤壌士)

(中東、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、イラン、イラク)

ビジネス短信 ea321bbd09c200b1