岸田前首相らAZEC議員連盟がインドネシアを訪問、脱炭素促進に向けた協力強化で合意
(インドネシア)
ジャカルタ発
2025年05月08日
岸田文雄前首相は2025年5月3~5日、石破茂首相の特使およびアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)議員連盟最高顧問として、同連盟所属議員らとインドネシアを訪問した(5月5日付、日本外務省)。岸田総理特使は4日、プラボウォ・スビアント大統領と約2時間会談し、石破首相の親書を手交した上で、AZECの取り組みをさらに推進するためにAZEC議連を設立した旨を紹介した。岸田氏はAZEC協力の継続・発展への日本の決意を伝えるとともに、アジア地域全体で約4,000兆円と見込まれる脱炭素化への資金ニーズに対し、日本の技術と金融で貢献していく意向を表明した。さらに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序および多角的自由貿易体制の維持・強化していく必要性などについても協議が行われた。
5日にはアイルランガ・ハルタルト経済担当調整相との会談で、西スマトラ州で実施中のムアララボ地熱発電事業の進捗を歓迎するとともに、西ジャワ州で実施されているレゴックナンカ廃棄物発電事業などにおける一層の協力強化で合意した。西スマトラ州にあるムアララボ地熱発電事業は、住友商事やINPEX、欧州大手総合エネルギー企業のエンジー、地熱発電事業デベロッパーのスプリームエナジーなどが出資する現地法人スプリームエナジームアララボが運営しており、2019年12月に商業運転を開始した。2023年12月には、日本政府が推進するAZEC構想の下、エネルギー移行に向けて取り組む優先事業として決定された。アイルランガ調整相からは「インドネシアは、持続可能な開発、特にAZECやその他2国間協力における日本のイニシアチブを高く評価している」との発言があった(5月5日付、経済担当調整府プレスリリース)。
経済担当調整府の発表によれば、2025年5月時点で、AZECの枠組み内で日本とインドネシアの事業者間で175の協力案件が組成されている。アイルランガ調整相は、それぞれの協力案件についてボトルネック解消と早期商業化を引き続き推進していくとの意向を表明しており、今後、脱炭素関連プロジェクトの事業化が一段と加速することが期待される。
また、岸田特使は同日、カオ・キムホンASEAN事務総長と会談し、AZEC議連の設立の紹介やアジア地域の脱炭素化に向けた意見交換を行ったほか、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)のアジア・ゼロエミッションセンターなどの視察も行った。
(八木沼洋文)
(インドネシア)
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