広東省の知財関連民事訴訟、2024年の第一審賠償命令が総額88億元超に

(中国)

広州発

2025年05月19日

中国の広東省高等人民法院は4月24日、「世界知的財産の日(4月26日)」に合わせ、「広東省内の人民法院における知的財産権の司法保護の状況に関する白書(2024年度)」(以下、白書)を発表した。白書では、懲罰的損害賠償(注)制度の適正な運用、技術案件の重要性、地域横断的な協力メカニズムの構築などの角度から、司法保護の実績・実践例が紹介された。

白書によると、2024年に広東省内の人民法院が結審した知的財産権に関連する案件は8万8,462件だった。内訳は、行政案件が70件、刑事案件が1,961件、民事案件が8万6,431件で、全国の案件の約5分の1を占めた。外国および香港、マカオの企業または個人が関与する案件数は1,986件だった。同省の人民法院は、懲罰的損害賠償制度の有効性を十分に発揮させることを重視している。同省の知的財産権に関わる民事第一審案件の判決で支払いが命じられた損害賠償総額は88億5,000万元(約1,770億円、1元=約20円)を超えた。そのうち、同制度を適用した懲罰的賠償総額は約2億元に達し、侵害行為に対する強い抑止力となった。

白書によると、広東省内の人民法院は、技術案件の審理の質を向上させ、最先端分野における規則の策定を強化し、協力的な保護メカニズムを改善することなどにより、生産力の「革新」と「質の向上」に堅実な法的保障を提供する、としている。特に2024年は、次世代情報技術、ハイエンドチップ、バイオ医薬品、新エネルギー、新素材などのコア技術と新興産業に関する知的財産権案件の審理を一貫して強化した。2024年に結審した、特許などの技術に関する知的財産権の第一審案件は前年比6.2%増の1万7,471件で、未結審の案件は34.6%減の4,528件となった。

同省の人民法院は、地理的表示の司法保護に関する地域横断的な取り組みも行っている。地域産業の発展に基づき広東省、福建省、江西省の3つの地域が連携し、全国初の陶磁器類の地理的表示の司法保護に関する協力メカニズムを構築した。また、白書によると、潮州市中級人民法院は全国初の「地理的表示司法保護サービスセンター」の設立を推進した。

(注)懲罰的損害賠償とは、加害者の行為が強い非難に値すると認められる場合に、加害者に制裁を加える目的で、被害者が実際に受けた損害を上回る金額の支払いを命じる賠償を指す。

(黎偉君)

(中国)

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