半導体産業の強化がUSMCA見直しの争点となるか
(メキシコ、米国)
調査部米州課
2025年05月15日
メキシコ経済省は5月14日、「2024~2030年のメキシコ半導体産業発展のマスタープラン」フォローアップミーティングの開催報告をウェブページ上で行った。同マスタープランは、2024年11月に全国電子産業通信情報技術会議所(CANIETI)と在メキシコ米国大使館が共同で発表したもので、5年間でメキシコの半導体産業の規模を倍増するという目標を掲げている。既にシスコ(Cisco)、フォックスコン(Foxconn)、スカイワークス(Skyworks)、クアルコム(Qualcomm)、アイ・ビー・エム(IBM)といった大手企業も目標達成に向けた協力の意を示しており、大規模な官民連携が進行中の分野だ(注)。
ミーティングを主導したマルセロ・エブラル経済相は、プラン策定時に設定された30の目標のうち、既に16項目が達成されたとした。加えて、2024年に米国と始動した「メキシコ・米国半導体産業協力フォーラム」を通じ、今後も両国間の対話を継続する重要性を強調した。
今回のミーティングでは、主に輸入時の許認可や税金の還付に関する手続きの改良、サプライチェーン強化、人材育成などについて議論された。さらには、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直しを行う際に、協定の中に半導体産業に関する章を新設し、同産業への投資を促進するという提案も行われた。
もとより、USMCA見直しについては、協定発効から6年目に当たる2026年7月1日までに実施予定とされていた。しかし、エブラル経済相は5月12日に行われた記者会見で、見直しのタイミングを早め、2025年下半期中に実施する可能性に言及した(2025年5月15日記事参照)。メキシコ政府としては、今後もUSMCAを下地に、米国と一体となった安定的な経済圏を形成し、米国の関税政策による影響を最小限に抑えた上で、ニアショアリング需要を取り込んだ投資先としての魅力を維持したい狙いがあるとみられる。
(注)米国との連携によって、メキシコの半導体産業を強化する取り組みについては、2025年3月7日付地域・分析レポート参照。
(佐藤竣平)
(メキシコ、米国)
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