米議会予算局が「大きく美しい1つの法案」に伴う家計への影響試算を発表

(米国)

ニューヨーク発

2025年05月22日

米国議会予算局(CBO)は5月21日、下院で議論が進められている「大きく美しい1つの法案」に伴う家計への影響試算外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同法案には、大規模な個人向け減税が盛り込まれている(2025年5月14日記事参照)一方で、低所得者向け栄養プログラム(SNAP)の削減(2,670億ドル分)や、メディケイドの支給要件の厳格化に伴う医療保険の喪失(6,980億ドル分)など家計に影響を及ぼし得る歳出削減も盛り込まれていることから、これらをトータルでみた場合の家計に与える影響が注目されていた。

本試算では、(1)連邦レベルでの税制(トランプ減税延長・拡大など)および現金給付(医療費適正化法に伴う健康保険補助金の削減など)の変更、(2)メディケイドおよびSNAPを通じて提供される給付に係る連邦政府支出の減少、(3)連邦政府支出の減少を受けた州の対応の変更、などを主な変数として扱っている。今回の発表では、所得上位・下位各10%層における所得への影響が公表された。これによると、上位層に対しては所得押し上げ効果(2027年4%増、2029年3%増、2031年1%増、2033年2%増)、下位層には所得押し下げ効果(2027年2%減、2029年4%減、2031年4%減、2033年4%減)がみられるとしている。

この結果を受け、ブレンダン・ボイル下院議員(民主党、ペンシルベニア州)は、「共和党が求めているのはまさにこれだ。子供たちが飢え、家族が医療保険から締め出される一方で、億万長者の寄付者の懐を肥やすことだ」と述べるなど、民主党は同法案への批判を強めている(政治専門紙「ポリティコ」5月21日)。

同法案についてドナルド・トランプ大統領は、「団結しなければならない20の理由外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表し、同法案にこれ以上の修正を加えることなく、早期に採決することを求めている。しかし、依然として下院共和党内の財政保守派(フリーダム・コーカス)はメディケイドのさらなる削減などを求めて調整が続いているもようだ。メディケイドに対するさらなる削減要求を受け入れた場合には、こうした民主党側からの批判が説得力を増す恐れもある。

(加藤翔一)

(米国)

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