労働法改正で試用期間の延長など労使関係が柔軟化
(チェコ)
プラハ発
2025年05月02日
チェコの労働法の改正法が4月29日、官報に掲載された。これにより、6月1日付で試用期間の延長や、解雇・退職の予告通知期間の短縮などが導入される。
試用期間について、改正前は一般職が3カ月以内、管理職は6カ月以内と規定していた。今回の改正により、一般職4カ月以内、管理職8カ月以内に延長した。
解雇・退職の予告通知期間に関する変更点は次のとおり。
(1)解雇(注)、退職の予告通知期間(最低2カ月)の開始日が通知日の翌月の1日から、通知当日に変更。
(2)解雇理由が次のいずれかである場合は、予告通知期間は最低1カ月に短縮。
- 被雇用者が職務に必要な前提条件を満たしていない。
- 被雇用者が職務遂行の上で重大な義務違反を行った。
- 被雇用者が雇用者負担の病欠手当支給の対象となる病欠の最初の14日間(2019年1月25日記事参照)に自宅待機義務などを怠った。
同法はこのほか、被雇用者が育児休暇後、子供が2歳に達するまでの期間に勤務を再開した場合、雇用者に対して、当該被雇用者の元の職場と職種への復帰を保証することも義務づけている。従来の労働法では、出産・育児関連では、同様の保証は出産休暇後の復帰に限定されていた。
労働・社会福祉省は、同法を下院が可決した3月7日付のプレスリリース(チェコ語)で、改正法は労使関係の柔軟性を高めることを目的としたもので、雇用者の国際競争力を強化する一方、被雇用者の権利保護も維持していると説明している。マリアン・ユレチカ労働・社会福祉相は「労使関係の多様性の拡大を求める声は長年、雇用者側と被雇用者側の双方から上がっていた。われわれは既に同様の制度が機能しているドイツ、オーストリア、デンマークのモデルからヒントを得た」と述べた。
国内企業団体も今回の改正法を歓迎している。チェコ商工会議所のズデニェック・ザイーチェック会長は3月7日付のプレスリリース(チェコ語)で、「過去の労働法改正は総じて被雇用者の保護に焦点が当てられていたが、今回の改正でようやく雇用者のニーズも反映された」と指摘した。
(注)雇用者は労働法に明記されている理由(会社あるいはその一部の閉鎖、組織変更、被雇用者の健康上の理由、被雇用者が定められた業務履行に必要な条件を満たしていない場合など)によってのみ、被雇用者に対して解雇を通告することが可能。
(中川圭子)
(チェコ)
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