米サンディエゴで生酒に特化したフェスティバル開催、多様な参加者が日本酒の魅力を堪能
(米国、日本)
ロサンゼルス発
2025年05月14日
米国カリフォルニア州サンディエゴのジャパニーズ・フレンドシップ・ガーデン・アンド・ミュージアムで4月27日、日本酒の中でも特に希少な「生酒」に特化したイベント「San Diego Spring『生酒』Sake Festival 2025」が開催された。同イベントは、サンディエゴでイベント会社を運営するmeribiz代表の白石絵理香氏、サンディエゴのBESHOCK Ramen、ASA Bakery、Sushi Gaga、Bar Kamonなどの飲食店を運営するDreampeerの山内雅貴氏および伊藤彩夏氏による「San Diego Sake Club」が企画運営することで実現した。
生酒は、加熱処理を施さないため、鮮度や繊細さが際立つ一方、輸送・保管に高度な管理が求められる。特に海外輸出では、海上輸送時に完全冷蔵コンテナを使用し、通関後は倉庫を経由せずに直接出荷されるなど、特別な流通体制が必要とされる。半年以上の保存は難しく、日本からの輸送は年に1度のみ。そのため、多くのバイヤーや飲食店は事前オーダーにより商品を確保している。
同イベント開催の背景について、利酒師でもある主催者の伊藤氏は「日本では春になると本数限定で生酒が出回ることが多く、その季節感と特別感は、まるで(ワインの)ボジョレーヌーボーのよう。米国でも、生酒が春の楽しみとして定着していくことを目指したい」と語った。
会場では、生酒19種、その他36種の日本各地の名酒が来場者に振る舞われた。来場者400人、酒ベンダー17社、飲食ベンダー4社が参加し、アジア系に限らず、多様な人々が日本酒の魅力を堪能した。
会場内では、鏡開きの日本酒を振る舞うイベントなど、日本文化に触れる体験も提供され、大いににぎわった。
来場者からは、「日本庭園で、普段見ない日本酒をたくさん味わえて特別な体験だった」「デトロイトから来た。生酒がこんなに味わえるイベントは日本酒好きでも初めて」といった声が聞かれ、会場の雰囲気とともに、生酒というテーマの魅力を多くの参加者に印象付けたようだ。
飲食ブースには、釜で炊いた日本米を使ったおにぎりを提供した「ONIGIRI HYUGA」、高品質で著名な「クラモトアイス」を使ったかき氷を提供した「KO-LI BAR」、本格焼き鳥の「ひのてつ」、アジアフュージョンのタコスを提供した「86’d」などが並び、生酒とのマリアージュを楽しむ来場者の姿が多く見られた。
同イベントはBtoC向けだったものの、シェフや飲食店関係者も多く訪れた。ベンダーからは「生酒を集中的に紹介できる場所は非常に貴重だ」との声が多く寄せられ、米国市場における認知度向上の好機となった。オンライン販売の導線構築や、飲食ブースとのペアリング提案を通じた販促活動も展開され、多くのブースが開場から閉場まで絶えず行列ができる盛況ぶりだった。
今後について、主催者の白石氏は「非日系レストランを会場にして、著名シェフとコラボしてイベントを行うことなども模索しており、より洗練されたかたちで日本酒文化を広めていきたい」と語る。乾杯酒としての活用や、若年層・アッパーミドル層への新たなアプローチも視野に入れた取り組みが今後、期待される。酒フェスティバルの次回の開催は、2026年4月末ごろを予定している。
伝統的な日本庭園の中の日本家屋が会場に(ジェトロ撮影)
鏡開きを実際に見るのがはじめてなのか、大変な人だかりに(ジェトロ撮影)
鏡開きの後に振る舞われた酒にも会場中の人が集まった(ジェトロ撮影)
(竹内由貴)
(米国、日本)
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