一次産品価格、新型コロナ禍以前の水準まで低下へ、世界銀行見通し

(世界)

調査部国際経済課

2025年05月09日

世界銀行は4月29日、「一次産品市場の見通し」〔プレスリリース(英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日本語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)〕を発表した。2025年の一次産品価格指数(2010年=100)予測は前年比12.4%減の92.1で、前回予測値(2024年10月発表)から6.9ポイントの減少となった。2026年は87.7(前年比4.8%減)とさらに低下し、2020年以来の低水準になる見通しだ(添付資料表参照)。2026年の名目価格は依然として新型コロナウイルス禍以前の2015~2019年の平均値よりも17%高いものの、実質ベースでは同平均値を初めて下回るとの予測を示した。

一次産品価格指数の軟化には、主に経済成長の鈍化と原油の供給過剰によるエネルギー価格の下落が起因した。エネルギー価格指数は2025年に83.8(前年比17.4%減)、2026年には78.9(前年比5.9%減)まで下落し、2020年以来の低水準となる予測だ。ブレント原油価格は、2025年の年間平均は1バレル当たり64ドル、2026年には同60ドルまで低下する見通しだ。こうした中、2025年の世界の石油供給量は需要量を日量平均で70万バレル上回る過剰供給が生じると予測される。電気自動車(EV)の急速な普及も石油需要を抑制しているとした。食料価格も、2025年は107.7、2026年は106.8と、それぞれ前年比で7.0%減、0.9%減と下降傾向を示す。

2025~2026年の世界の一次産品価格の下落は、貿易障壁の高まりから生じる短期的なインフレリスクを緩和するが、一次産品を輸出国する多くの開発途上国の経済成長見通しを阻害する可能性もある。インダーミット・ギル世界銀行グループ・チーフ・エコノミスト兼上級副総裁は「一次産品価格は50年以上ぶりに乱高下している。大幅な価格変動と価格低迷の同時発生は悪い兆し」と警鐘を鳴らす。特にこれまで一次産品価格の上昇で恩恵を受けてきた途上国政府に対して、財政規律の回復や、事業環境整備、自由貿易の推進を訴えた。

世界銀行は今後の見通しに対するリスクが下振れに傾いていると指摘した。貿易関係の悪化や金融引き締めの長期化により、世界経済の成長が予想よりも鈍化すれば、コモディティー需要、特に工業製品の需要を押し下げる可能性がある。加えて、OPECプラスが自主減産を解除した場合、石油の生産量が需要量を大幅に上回ると予想される。一方、上振れリスクとして、貿易摩擦の緩和のほか、地政学的緊張の悪化や異常気象が商品価格を上昇させる可能性があるとした。

(馬場安里紗)

(世界)

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