海関総署、知財保護に関する典型事例を発表

(中国)

広州発

2025年05月09日

中国海関総署(中国税関)は4月23日、「2024年中国税関知的財産権保護典型事例外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。毎年「世界知的財産の日(4月26日)」に合わせ、中国各地の税関が対応した前年の知的財産保護関連事例を選出している。2024年は管轄地域や行政部門を越えた連携や中国からの輸出品、中国への輸入品に対する水際差し止めなどの事例が10件選出された(添付資料表参照)。

典型事例では、日本企業に関連するブランドについての商標権侵害事例を複数取り上げた。アモイ税関は2024年4月に、輸出品から「AJINOMOTO」などの商標権侵害品を押収し、それらに関する通関データや物流情報の分析を行った。その結果、同年6月と11月にも同様の商標権侵害品の輸出を差し止めることができた。この件については、消費者の健康や安全に直接関わる食品の権利侵害に対し、ビッグデータの分析を活用して有効に取り締まりを行ったと評価した。

広州税関が日本のスポーツ用品ブランド「molten」に対する商標権侵害品の輸入を差し止めた事例も取り上げた。2024年は国際的なスポーツイベントが集中的に開催され、スポーツ用品の権利侵害リスクが高まったことから、広州税関では重点的にモニタリングを実施した。その結果、同年1月に「molten」などの商標権を侵害するサッカーボール1万3,000個、総額41万5,000元(約830万円、1元=約20円)相当の輸入を差し止めた。続く7月にも「molten」の商標権を侵害するサッカーボール3,079個、総額10万1,000元相当の輸入を差し止めることに成功した。この件について「一部の労働集約型産業の国外移転に伴い、輸入段階での知的財産権保護の機能はより一層重要になっている」とし、今回の件は権利侵害品流入の食い止めが中国のスポーツ産業の発展を支えた典型事例とした。

大連税関傘下の大窯湾税関は2024年4月に、「NTN」の商標権を侵害するベアリング10点、総額1,444元相当を輸出貨物から押収した。当事者が過去1年以内に2度も税関から権利侵害品の輸出に関する処罰を受けていたことから、「中華人民共和国税関行政処罰裁量基準(三)(詳細はジェトロのウェブサイトPDFファイル(246KB)参照)」に基づいて加重処罰を行った。典型事例では、こうした税関が自らの裁量で行政処罰を行う取り組みについて、「行政処罰の公正性と透明度を高め、当事者の合法的権益の保障と税関による法執行の規範化・専門化の促進を図る上で重要な意義がある」とした。

(小野好樹)

(中国)

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