米環境保護庁、PFAS関連企業に対するデータ提出の報告期間開始を再延期
(米国)
シカゴ発
2025年05月19日
米環境保護庁(EPA)は5月12日、有害物質規制法(TSCA)第8条(a)(7)に基づく有機フッ素化合物(PFAS、注1)報告義務の規則に関し、対象となる事業者のデータ報告期間の開始を延期する最終暫定規則(IFR)を発表し、翌13日に発効した。EPAはデータ収集の準備に追加の時間が必要なことを理由とし、延期は今回が2度目となった。
2023年10月に公布されたこのPFAS報告義務の規則では、2011年から2022年の間のいずれかの年に商業目的でPFASを製造または輸入した事業者は、環境・健康への影響などに関する特定のデータを規則で定められた報告期間中にEPAに報告する義務がある。今回の報告期間開始の延期によって、新たな報告期間は2026年4月13日~10月13日の約半年間となった。なお、PFASが含まれる製品の輸入事業者で、かつ小規模な事業者については、報告期間の終了日は2027年4月13日となった。
報告義務の対象としてEPAが想定する事業者の業種は次のとおり。NAICSコード(注2)を併記する。ただし、これが対象となる全ての業種ではなく、ほかの業種も規制の対象となる可能性がある。
- 建設業(23)
- 製造業(31~33)
- 卸売業(42)
- 小売業(44~45)
- 廃棄物処理および有害物質の除去・浄化サービス(562)
また、EPAによると、報告義務の内容は次のようなものが含まれる。
- 各物質の一般名称または商品名、化学的名称、分子構造
- 各物質または混合物を使用する分野、または使用予定の分野
- 各物質または混合物の製造または加工の総量、各用途の分野ごとの製造または加工量、およびそれぞれの製造または加工が予定されている量の推定値
- 各物質または混合物の製造、加工、使用、または廃棄から生じる副産物の説明
- 各物質または混合物の環境への影響および健康への影響に関する既存の全ての情報
- 作業場所で各物質または混合物に暴露された個人の数、および曝露される個人の数の推定値、ならびに暴露期間
- 各物質または混合物の廃棄方法または手順、およびそのような方法または手順の変更。
なお、EPAは連邦政府のポータルサイト(案件番号:EPA-HQ-OPPT-2020-0549)を通じて6月12日まで、IFRに対するパブリックコメントを募集している。
(注1)PFASは、いわゆる有機フッ素化合物の総称で、耐熱性や耐水性、耐油性、非粘着性などの特性があり、衣料、食品包装、調理器具、化粧品、電子・電気部品、自動車部品をはじめとする多くの産業や製品に利用されている。一方で、PFASが環境や人体に与える悪影響を理由に、PFASに関する規制の導入やメーカーが対象製品の製造中止を表明するといった動きもある(2022年12月22日記事、2023年3月15日記事参照)
(注2)NAICS(North American Industrial Classification System)とは、米国連邦統計機関が米国経済に関する統計データの収集、分析、公表を目的として、事業所の分類に用いる標準的な分類システム。
(星野香織)
(米国)
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