NY州法曹協会代表団が来日、トランプ政権下での米国ビジネスに関する法務セミナーを大阪で開催

(日本、米国)

大阪本部海外ビジネス推進課

2025年05月26日

大阪弁護士会は519日、ニューヨーク(NY)州法曹協会代表団の来日に合わせて、トランプ政権の下での米国ビジネスに関する法務セミナーを実施した。

セミナーの冒頭では、大江橋法律事務所のパートナーである小林和弘弁護士が今回のトランプ政権による関税措置への対処に関し、法務の観点からリスクが生じうる事項について解説した。関税措置を受け、企業がとる行動としては、製品供給価格の引き下げが想定されるが、値下げするとダンピングとみなされる恐れがあると指摘。同様に、米国に子会社があり、関税を加味して親会社が子会社への販売価格を引き下げようとする場合は、移転価格税制の問題が生じうる。また、個別の売買契約で最低購入義務を明記している場合、米国の買主がその義務が果たせなくなる可能性があると指摘。加えて、今回の関税について、不可抗力条項を適用しようとしても、日本の民法には「金銭債務について不可抗力をもって抗弁することができない」という趣旨の法文があり、適用ができない恐れがあると語った。

写真 セミナーの様子(ジェトロ撮影)

セミナーの様子(ジェトロ撮影)

国際的な企業間仲裁に精通している米コビントン・バーリング法律事務所のチョン・キョンファ弁護士は、昨今の変動目まぐるしい関税政策動向において、企業が契約面でリスクを管理する手段について説明した。今般の関税措置は企業間紛争の増加につながる恐れがあると述べ、紛争の発生を回避するためには、a.契約時に関税関連費用条項を盛り込み、契約書が規定する関税の範囲を特定しておくこと、b.関税が変動することを想定した当事者間でリスク負担と、それに基づく価格を調整する条項を契約書に盛り込んでおくことが重要とした。

また、契約不履行に関する規程として、c.著しい関税の引き上げに伴い契約自体の目的喪失や商業的履行が困難となる条項や、d.法改正に伴い発生したコストの増減に関して契約価格を調整する法改正条項、e.予見不可能な事情の変更が生じた場合に契約条件の調整や再交渉を可能とする事情変更条項について盛り込んでおくことが肝要と述べた。

このほか、セミナーでは、米国企業買収と反トラスト法の関係、DEI(多様性、公平性、包摂性)をめぐる動向、知的財産訴訟などがテーマとして取り上げられた。

(齋藤寛)

(日本、米国)

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