米穀物大手ADM、バイオ燃料・貿易政策の不透明感で通期業績見通しは予想の下限に
(米国)
シカゴ発
2025年05月12日
米国の穀物大手アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM、本社:イリノイ州)は5月6日、2025年第1四半期の決算を発表した。トランプ政権のバイオ燃料政策と貿易政策の不透明感、世界的な作物の供給過剰による農産物価格の下落などが同社のビジネス全体の売り上げと利益を押し下げているとし、2025年の通期業績見通しとして1株当たり利益(EPS)が予想(4.00~4.75ドル)の下限付近になる可能性が高いと述べた。
同社の主要事業である、大豆やトウモロコシなどの穀物を調理用油やエタノールなどバイオ燃料用に加工する農業サービス・油糧種子部門の2025年第1四半期の営業利益は、前年同期比52%減少の4億1,200万ドルとなり、事業全体の営業利益(前年同期比38%減の7億4,700万ドル)を押し下げた。
同部門の不振の一因として、買い手となる燃料製造業者が、インフレ削減法(IRA)に基づく再生可能ディーゼル生産に関する税額控除のガイダンスの発表を待ってバイオ燃料を買い控えていることが指摘されている(クレインズ・シカゴ・ビジネス5月6日)。同社のモニシュ・パトラワラ執行副社長兼最高財務責任者(CFO)は、今後バイオ燃料義務量(RVO)に関する規則が明確になれば需要が回復し、下半期に回復が見込まれるだろうと述べた。
また、パトラワラ氏は米国産大豆の主要な輸出相手国である中国に関して、「2017~2018年に米国との貿易摩擦が起きた際は、中国は大豆の輸入先をブラジルに変更するなどした。中国の米国への依存度は低い」と述べ、今後については「第2、第3四半期にはブラジルやアルゼンチンからの中国向け輸出が増えるだろう。米国は10月が収穫の時期なので、その時点まで状況が明確になるのを待つしかない」と述べた。
(星野香織)
(米国)
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