西オーストラリア州、欧州への水素輸出可能性調査を実施
(オーストラリア、オランダ、ドイツ)
シドニー発
2025年05月14日
オーストラリアの西オーストラリア(WA)州政府のジャッキー・ジャービス農業・食料・漁業・林業・中小企業・中西部地域担当相と、ステファン・ドーソン地域開発・港湾・科学技術革新・医療研究・キンバリー地域担当相は5月2日、WA州の中西部地域(Mid West)のグリーン水素ハブと欧州への輸出の実施可能性について、「3国間水素ハブ調査」(注1)を実施したことを発表した。
調査は、WA州政府(担当:雇用・観光・科学・イノベーション省)、中西部港湾局、オランダのロッテルダム港、ドイツのフラウンホーファー太陽エネルギーシステム研究所が共同で行った。中西部地域で州政府が開発するオーカジー戦略工業地区(SIA:Oakajee Strategic Industrial Area、注2)で、グリーン水素を生産し、オーカジー港からロッテルダム港を経由しドイツに輸出することを想定し、WA州と欧州間のサプライチェーン構築可能性調査を実施した。2030年までに300万トンのアンモニア輸出を目標にした。
調査の結果、中西部地域はグリーン水素ハブとして類を見ない有力地だと明らかになった。中でも半径350キロの広大な土地を有するオーカジーSIAは、再生可能エネルギー発電のポテンシャルが高く、理論上は1万テラワット時(TWh)の太陽光発電、5,700TWhの陸上風力発電が可能と推計した。また、オーカジー港の深海港としてのポテンシャルも確認された。これらの結果を踏まえ、州政府は、ドイツへのグリーン水素の輸出は実現可能なことが判明したと発表した。水素の運搬方法は、液化水素やメタノールと比較したところ、短期的にはアンモニアが最も適切な選択肢だとした。オーカジーで調達可能な豊富な再生可能エネルギー資源を利用することで、水素の生産・貯蔵コストを大幅に削減できるため、長距離輸送のコストを吸収することが可能だという。
WA州は2024年10月に「2024年-2030年再生可能水素戦略」を発表し、同州がグリーン水素の主要な生産・消費・輸出拠点となることや、2030年までに同州で生産した水素を海外輸出するためのオフテイク(長期供給)契約を獲得することを目指している。また、中西部地域は、WA州政府が支援する水素ハブの1つで、連邦政府の支援する水素ハブも含めると、ほかに州北部ピルバラ、州南部クイナナ地域がある(2025年2月14日付地域・分析レポート参照)。また、中西部地域では、連邦政府のグリーン水素生産価格差支援策「水素ヘッドスタートプログラム」(2025年2月14日付地域・分析レポート参照)で初めて採択された「マーチソングリーン水素プロジェクト」も計画されており、デンマークの再生可能エネルギー開発会社コペンハーゲン・インフラストラクチャー・パートナーズ(CIP)の子会社が手掛ける。
(注1)調査結果は、ドイツのフラウンホーファー太陽エネルギーシステム研究所のプレスリリースでも参照可能。
(注2)州政府は10億オーストラリア・ドル(約950億円、豪ドル、1豪ドル=約95円)の戦略工業基金を投じて、州内に11カ所の戦略工業地区を指定し、州の新たな投資・雇用・生産を生み出す重工業地区として開発している。オーカジーSIAは、中西部地域のグレーター・ジェラルドトン市の北部に位置する。同地区と港湾のマスタープランは、水素の生産や輸出に加え、鉄鉱石、グリーンスチールの輸出可能性を見込んで現在更新が行われている。
(青島春枝)
(オーストラリア、オランダ、ドイツ)
ビジネス短信 8ec72c0a4b9e96bc