欧州委、知財保護懸念国リストを更新、中国は最優先国

(EU)

デュッセルドルフ発

2025年05月30日

欧州委員会は5月22日、「第三国における知的財産権(IPR)の保護と執行に関する報告書」を2年ぶりに公表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

同報告書では、IPRの保護と執行の状況がEUの経済的利益に大きな損害を与えていると懸念される国々を「優先国」として示し、それらの国々におけるIPRの保護や執行の不備をEUへの経済的損害の観点から指摘している。

「優先国」は、模倣品問題の深刻度や関連法令の整備状況などによって3つのカテゴリーに分類され、2年ごとに更新される。最優先国は中国で、次いでインドとトルコが第2優先国、アルゼンチン、ブラジル、エクアドル、インドネシア、ナイジェリア、タイが第3優先国に位置づけられた。最優先国、第2優先国は2年前と変化はなく、第3優先国からマレーシアとサウジアラビアが削除された。

第三国におけるIPRの保護や執行の不備に関しては、法制度の不備や運用の不透明さ、技術移転の強制、模倣品・海賊版のまん延、営業秘密の保護不足、知財庁や裁判所の執行能力不足、審査や手続きの遅延、厳格な特許性基準、試験データ保護への懸念、植物品種保護制度の未整備、税関当局の執行権限不足、そして制裁・罰則の軽さといった点が挙げられており、これらがEU企業にとって重大な経済的損害をもたらしているとした。

また、同時に発表された「模倣品・海賊版監視リスト」では、模倣品や海賊版の最新動向を示すとともに、利害関係者から報告された、海賊版コンテンツや模倣品を提供しているウェブサイトや実店舗の一覧を掲載している。

2023年にはEU税関が8億1,100万ユーロ相当に上る1,750万点の物品模倣品を押収するなど、IPRの侵害はEUの年間のGDPの約半分を担う知財集約型産業に深刻な影響を与えており、知的財産権の保護はEU経済の成長に不可欠だと指摘した。

(吉森晃、佐藤吉信)

(EU)

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