ホンダカナダ、150億CドルのEV工場建設計画を延期

(カナダ)

トロント発

2025年05月15日

ホンダカナダは5月13日、カナダでの電気自動車(EV)の包括的バリューチェーン構築計画を約2年延期すると発表した。声明によると、この決定は関税の影響によるものではなく、EV市場の成長が当初の想定以上に鈍化しているという市場状況を反映したものと説明している。同社広報担当のエリック・チウ氏は「EV市場の近年の減速により延期を決定した。市場環境の変化に応じて、事業の時期と進捗状況を引き続き評価していく」と述べた。また、オンタリオ州アリストンのホンダ・カナダ・マニュファクチャリング(HCM)工場での現在の雇用や生産に影響はないと付け加えた。

同社は2024年4月に、カナダ連邦・州政府による財政支援を含む総投資額150億カナダ・ドル(当時、約1兆7,250億円、Cドル、1Cドル=約115円)の「EV完成車工場・EV用バッテリー工場のカナダ・オンタリオ州での建設を含むEV包括的バリューチェーン構築計画」を発表した(2024年4月30日記事参照)。当初の計画では、2028年にはフル稼働し、年間最大24万台のEV生産が見込まれていた。

これを受けて、オンタリオ州のダグ・フォード首相は、ホンダとの協議の中で同社が拡張計画に引き続き取り組む姿勢を示しており、同州でホンダが自動車製造を継続することを確信していると述べた。また、カナダの部品サプライヤー230社を代表する自動車部品製造業者協会の会長フラビオ・ボルペ氏は、ホンダをはじめとする多くの自動車メーカーが米国の関税政策による市場の冷え込みを依然として実感していると分析している。同氏は「ホンダが歴史的なEV投資の決定をした時に抱いた信頼をカナダが取り戻せるよう、早く解決策が見つかることを期待している」と述べた。

米国による関税政策により、車両価格の上昇とそれに伴う消費者需要の低下が懸念されている。ホンダはこれによって営業利益を6,500億円押し下げる可能性も踏まえて、2026年3月期の業績見通しでは、前期比58.8%の減益見通しを発表している。

(井口まゆ子)

(カナダ)

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