米オープンAI、AIデバイス開発に本格参入、元アップルデザイナーのスタートアップを65億ドルで買収へ

(米国)

サンフランシスコ発

2025年05月29日

米国のオープンAIは5月21日、アップルの元チーフデザイナーのジョニー・アイブ氏が設立したスタートアップ「io」を、総額約65億ドル相当の株式交換で買収すると発表した。オープンAIは既にioの株式の23%を保有しており、今回の取り引きでは残りの株式(約50億ドル相当)を取得する。これにより、ioのエンジニアや製品開発者ら55人がサンフランシスコにあるオープンAIの研究開発チームと連携することになる。

また、アイブ氏は独立性を維持しつつ、自身が率いるデザイン会社「LoveFrom」を通じて、オープンAI全体のソフトウエア、ユーザーインターフェースデザインを指揮する予定だ。今回の買収により、オープンAIは初めて本格的なハードウエア開発部門を持つことになる。

アイブ氏はiPod、iPhone、iPad、MacBook Airといったアップルを象徴する数々の製品をデザインしたことで知られ、アップルの新本社「アップルパーク」の設計にも関与した。2023年にはアップル出身のスコット・キャノン氏、エバンス・ハンキー氏、タン・タン氏とともに、ioを共同設立した。ハンキー氏はアイブ氏の後任として、アップルのデザイン責任者を務め、2022年まで在籍し、タン氏はiPhoneとApple Watchのプロダクトデザインを2024年まで担当していた(「CNBC」5月21日)。

オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)とアイブ氏は2023年ごろから生成人工知能(AI)デバイスの可能性について協議を重ねてきたという。

オープンAIの公式サイトで公開された発表動画で、アイブ氏は「従来の製品を超える」デバイスを目指していると語った。また、アルトマン氏は「今、チャットGPTに何かを尋ねたいと思ったら、PCを開いてアプリを立ち上げ、質問を入力し、結果を待たなければならない。それが現在の限界だ」と語るとともに、「私はこのテクノロジーにはもっとふさわしい何かがあるべきだと思う」と続けた。

オープンAIとioが開発するこのデバイスは、ユーザーの環境や生活を把握する能力を持ち、目立たず、ポケットや机の上に置けるサイズになるという。アルトマン氏はioに関する動画の中で「最近、アイブ氏が試作品の1つを自宅に持ち帰らせてくれた。しばらくそれを使ってみて、これは人類がこれまでに目にした中で最もクールなテクノロジーだと確信した」と語った。

このAIデバイスのリリースは2026年末を予定している。

(松井美樹)

(米国)

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