米国でインド人留学生のビザ取り消しが相次ぐ

(インド、米国)

ニューデリー発

2025年05月08日

米国で、インド人留学生のビザや学生・交換訪問者情報システム(SEVIS、注)記録の取り消しが相次いでいる。4月17日に米国移民弁護士協会(AILA)が発表したレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、同協会が把握した学生に対するビザやSEVIS記録の取り消し事案のうち、50%はインドからの留学生だったことが判明した。次に多いのは中国の14%で、韓国、ネパール、バングラデシュが続いた。

同レポートによると、米国政府はSEVIS記録の取り消しについて公式に根拠を述べていないが、多くの学生が警察との接点があったと報告している。ただ、86%は警察との何らかのやり取りを報告しているものの、そのうち33%は起訴には至っていない例だった。また、SEVISの記録取り消しは実際の学生の行動記録と必ずしも連動しているわけではなく、警察との接点がなくとも、犯罪歴を理由としてSEVISの記録取り消しやビザの取り消しが生じている事例もあったという。

インド外務省の広報担当者はこの状況を受け、「複数のインド人留学生が米国政府から留学生向けのF-1ビザに関する通知を受け取っていることは把握している。当問題については調査中で、大使館および領事館が学生と連絡をとり、支援している」と述べた。

米国国際教育研究所(IIE)の報告書によると、2024年3~8月に行われた調査で米国へのインド人留学生は約33万人となり、留学生全体の約3割と最も大きな割合を占めている。インド人学生の間では不安が広がっており、現地報道によると、インド政府は米国政府に対して外交ルートを通じて懸念を表明している。

(注)米国国土安全保障省が運営するシステムで、F-1ビザ(留学生向け)、M-1ビザ(職業訓練生向け)などの情報を管理するために使われる。SEVIS上の個人記録が取り消されると、学生はF-1ビザなどのビザステータスが維持できなくなる。

(佐藤利昭)

(インド、米国)

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