電気料金を4.8%引き上げ、7カ月ぶりの改定
(ベトナム)
ハノイ発
2025年05月15日
電力事業を担う国営企業のベトナム電力公社(EVN)は、5月10日から電気料金を4.8%引き上げると発表した。付加価値税を除いた平均電気小売料金は、1キロワット時(kWh)当たり2,204.06ドン(約12.6円、1ドン=約0.0057円)となる。電気利用の用途や時間帯で価格設定が異なり、工業分野では1kWh当たり1,146ドンから3,640ドンの範囲で設定した(添付資料表参照)。
電気料金の引き上げは2024年10月以来、約7カ月ぶり(2024年10月29日記事参照)で、前回の改定も合わせると、9.8%の上昇となる。また、2023年以降では4回目の改定で、同年初と比べて18.2%上昇した。EVNによると、為替変動に伴う石炭などの調達コスト増を相殺し、液化天然ガス(LNG)購入や再生可能エネルギーなど、新たな電源開発に向けた投資の原資を捻出するため、値上げに踏み切った。
EVNは2022~2023年に合計50兆ドン近い損失を計上したが、2024年は黒字化が見込まれる(ベトナムネット1月13日)。財政状況の改善を受け、EVNは増大する電力需要に対応するため、2025年に110兆ドン近い投資を実施し、電源開発や送電網整備を進める計画を示している(カフェF 1月7日)。
現地報道では、今回の値上げによる2025年の消費者物価指数(CPI)上昇率は最大でも約0.1%にとどまるとし、インフレへの影響は少ないと伝えている(VNエコノミー5月12日)。ただし、これはCPIに占める電力の構成比(3%)を基に、電力価格の引き上げ分のみの影響を推計したとみられる。電気料金は7カ月の間に9.8%上昇したため、生産コストの増大や、製品・サービスの価格転嫁など波及効果に注視する必要がある。
(萩原遼太朗)
(ベトナム)
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