トランプ米大統領、医薬品の「最恵国待遇価格」設定、外国の不公正な慣行の調査指示する大統領令を発表

(米国)

ニューヨーク発

2025年05月14日

米国のドナルド・トランプ大統領は5月12日、医薬品価格の引き下げを目的とした「最恵国待遇の処方薬価格を米国の患者に提供する」と題する大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。

大統領令では、米国の人口は世界の5%未満にもかかわらず、世界の医薬品利益の約3分の2を提供しているとし、この不均衡は医薬品メーカーが外国市場で低価格で医薬品を販売する代わりに、米国では高価格にすることで補填(ほてん)する仕組みによってもたらされていると指摘した。米国人は同じ医薬品を購入する際に米国内で過大な料金を支払うべきではなく、「最恵国待遇価格」へのアクセスを保証される必要があるとして、次の措置を講じるとした。

〇米国人が資金提供するイノベーションに対する外国のフリーライダー行為への対応

  • 商務長官と米国通商代表部(USTR)代表は、外国が米国民に不合理、または差別的な行為、政策、慣行に従事し、米国の国家安全保障を損なう可能性があり、米国の患者がグローバルな医薬品研究開発の過大な負担を強いられる結果となる行為を防止するため、必要な措置を講じる。

〇米国の患者に対する最恵国待遇価格での直接販売の促進

  • 保健福祉長官は、最恵国待遇価格で医薬品を販売する医薬品メーカーによる患者への直接販売プログラムの促進を図る。

〇最恵国待遇価格の確立

  • 保健福祉長官は、大統領令発令から30日以内に、医薬品メーカーに対し、米国内の医薬品価格を他の先進国の水準に合わせるため、「最恵国待遇価格目標」を通知する。
  • 上記を行っても最恵国待遇価格の実現に著しい進展が見られない場合、4月15日付大統領令第14273号「米国人を再び最優先に置き薬価を引き下げる」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの第13条に基づく報告書によって特定された独占禁止法違反行為に対する執行措置を行う、商務長官はグローバルな価格差別を助長する可能性のある医薬品、または前駆物質の輸出に関する全ての必要な措置を検討するなどの措置を講ずる。

医薬品の輸入を巡っては、トランプ政権は4月1日から、1962年通商拡大法232条に基づき、米国の国家安全保障に及ぼす影響を判断するための調査を開始している。調査対象はジェネリック医薬品および非ジェネリック医薬品の完成品、医療対策製品、有効医薬成分や主要出発物質などの重要な投入物、それらの派生製品を含む医薬品、医薬成分とその派生品となっている(2025年4月15日記事参照)。

今回の大統領令では、「必要な措置」を講ずるための具体的な法的根拠は示されていない。トランプ氏は5月12日の記者会見で「必要に応じて、製薬会社や特にこのような(不公正な)行為を行っている国を調査し、その費用を米国での事業展開の料金に上乗せする措置を講じる。つまり、彼らが正しいことを行わない場合、関税に追加する」と述べている(米国通商専門誌「インサイドUSトレード」5月12日)。

(赤平大寿)

(米国)

ビジネス短信 331458b090cb510b