CATARC、中国自動車の海外知的財産権保護研究報告(2025年)発表

(中国)

上海発

2025年05月29日

中国自動車技術研究センター(CATARC)は5月17日、「中国自動車海外知的財産権保護研究報告(2025年)」を発表した。

同報告によると、中国自動車メーカーの海外への特許出願件数は、世界の特許出願件数の30%に達し、そのうち有効特許保有件数は全体の47%(前年より構成比が12ポイント拡大)を占めた。中国自動車メーカーが海外進出で存在感を着実に高めていることを示した。

また、報告では、世界の自動車市場の特許ポートフォリオ(注1)と訴訟の発生状況にも焦点を当てた。中国自動車メーカーは「特許協力条約」(PCT、注2)を通じて、海外で特許ポートフォリオを構築しようとした際に、約50%近くの企業が最終的に特許を取得できていないと指摘し、グローバル企業と一定の差があるとした。

そのほかにも、同報告では、中国の海外での訴訟紛争は現在、自動車部品に集中しているとした上で、中国自動車メーカーは自動車コア技術の潜在的なリスクを警戒し、特許、商標、著作権の3つの知的財産権保護を重点的に注視すべきとした。特許に関しては、特許侵害が主なリスクで、製品の研究開発・設計・製造、海外市場開拓までの全工程で、特許ポートフォリオの綿密な管理が極めて重要とした。商標に関しては、商標権侵害と冒認出願が主なリスクで、商標権の属地主義の原則から、事前に進出市場先で商標登録を完了させることが紛争を回避するカギだとした。著作権については、自動車のボディーライン、内装デザインなどのクリエーティブオリジナル性の保護が重要で、他社のデザインなどを許可なく使用することは著作権侵害になる可能性が高いと警告した。

CATARCの王軍雷首席専門家は「中国自動車メーカーによる海外進出は今後、商品力や知的財産力で差別化を図る必要がある。その上で権利侵害リスクの防止・警戒・対応に注意を払い、海外市場で高価値な特許ポートフォリオの構築を強化し、特許戦略をもってグローバル化を推進するべき」と述べた。

(注1)特許ポートフォリオとは、自社(個人)が持っている特許を分野・種類別等に分けて一覧化したもの。

(注2)世界知的所有権機関(WIPO)が管理している国際的な特許出願手続きを簡素化するための多国間条約を指す。同条約に基づく国際特許出願制度では、企業や発明者は費用対効果の高い単一手続きを通じて、複数の国で特許保護を求めることができる。

(許蓓莉)

(中国)

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