著作権フェアユースの適用を巡りメタの生成AI訴訟が始まる
(米国)
サンフランシスコ発
2025年05月13日
米国メタ・プラットフォームズの生成人工知能(AI)「ラマ(Llama)」のトレーニングに、海賊版サイトから取得したデータを使用したことが著作権侵害にあたるとして、複数の作家が提起した訴訟が5月1日、カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所で開かれた。著作権が保護された作品を用いた生成AIのトレーニングが、著作権法上のフェアユース(注)に該当するかどうか。この裁判の判決が前例となる可能性がある。
訴えによると、原告はメタが、自社の生成AIのトレーニングのために、オンライン海賊版ネットワークから数百万冊の書籍を意図的にダウンロードし、広範かつ直接的な著作権侵害を行ったと主張。さらに、AI企業が著作権者の作品を違法に複製し、生計を脅かすコンテンツを生成しているとした。一方、メタは、書籍の入手方法は関係なく、利用は著作権法の「フェアユース」の例外に該当すると反論。書籍を全く新しく、使い勝手の良い、変容的な生成AIプロダクトのために活用しており、これは著作権法上でも推奨される行為にあたると主張した。
連邦地裁のビンス・チャブリア判事は、メタに対し、「生成AIは、著作権で保護された素材を利用して、膨大な競合製品を創出できる。作品の販売市場を劇的に変え、破壊するような製品を作るために、本来支払うべき著作権料を支払わなくてよいという主張が、フェアユースに当たるとは理解できない」と疑念を呈した。同様に、原告側にも、作家らの作品の販売への影響がどの程度あるのか証明されていない、と疑念を呈した。同判事は「生成AIが著作物の販売を妨げ、市場が実際に損なわれたことを証明できるかが、フェアユースの成立を左右する」と述べている。
同判事は、「作品のコピー自体は変容的な目的のために行われたにもかかわらず、競合商品が市場に大量に出回る可能性もあるため、今回のケースは異例だ」と述べた(ロイター5月2日)。生成AIのためのフェアユースが認められるかどうか、当地のAI関係企業や法曹界からも注目が集まる。
(注)米国著作権法第107条による、一定の利用目的(批評、解説、ニュース報道、教育、研究、調査など)のために、著作権保護された作品をコピー、利用することは「フェアユース」に該当し、著作権侵害に該当しないとする規定。この規定が適用されるか否かは、著作物の利用目的(商業的か非商業的か)、著作物の性質、著作物全体の中で利用された部分の量および重要性、著作物の潜在的市場または価値に対する利用の影響により判断されるとしている。
(芦崎暢)
(米国)
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