欧州委、ワイン部門の強靭化に向け法案発表、ノンアル製品の定義明確化
(EU、米国)
ブリュッセル発
2025年04月08日
欧州委員会は3月28日、ワイン部門の競争力維持と強靭(じん)化に向け、関連する3つのEU規則を改正する規則案を発表した(プレスリリース
)。同規則案は今後、欧州議会とEU理事会(閣僚理事会)で審議される。
EUのワイン用ブドウ畑の栽培面積は2023年に世界全体の約44%で、ワインの生産量と消費量はそれぞれ約60%、約48%を占める。また、ワインは2024年のEUの農産物・食品の輸出額ベースで3番目に多い。しかし、近年、消費量の減少や気候変動、市場の不確実性の高まりといった課題に直面している。欧州委は2024年9月、EU加盟国や関連団体の代表と「ワイン政策に関するハイレベルグループ」を立ち上げ、対応策を話し合い、12月に提言書を発表した(プレスリリース
)。同提言書を基に、改正案は以下の政策を提案した。
まず、市場の不安定化につながる過剰生産を抑止するため、加盟国にブドウの抜根や摘果の実施権限を与え、生産量を調整する。EUの植栽権制度を柔軟化し、例えば、生産者が気候条件の変化に対応した品種への植え替えを検討する時間を十分確保できるようにする。気候変動対策への支援を強化し、加盟国が行う事業でEUの財政支援の割合を最大80%まで拡大する。
さらに、過去30年で最低水準に落ち込んでいる消費の回復に向け、革新的な製品の流通を促進するため、ルールを明確化する。特に需要が近年高まっているアルコール濃度が低い製品に関し、EUレベルで製品の定義を統一する。例えば、アルコール濃度が0.5%未満ならば「アルコールフリー」、0.05%未満の場合は「アルコール濃度0.0%」の記載を提案した。また、デジタル化が進む製品ラベルについて、消費者に原材料や栄養価に関する情報を明確に提供するため、EUレベルでルールを統一する。
このほか、EUの地理的表示(GI)制度の保護対象であるワインの生産地の観光振興支援や、EUが助成する域外での販売促進事業の実施期間を3年間から5年間に延長する。
欧州ワイン産業協議会(CEEV)は3月28日、「ハイレベルグループの提言書の内容の多くが3カ月で法案となった」と改正案を歓迎した。また、主要輸出相手国の米国のEU産ワインに対する追加関税への警戒感から、輸入を一時停止する業者が出始め、EU企業にとっては週当たり1億ユーロ規模の損失が生じているとし、米国との貿易摩擦の解消に向け、迅速な対応を要請した(プレスリリース)。
(滝澤祥子)
(EU、米国)
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