チェコでの水素普及に向けて専門家が議論

(チェコ)

プラハ発

2025年04月03日

チェコのプラハ市内で3月19~21日、水素技術に関する国際会議「Hydrogen Days 2025外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が開催された。15回目の開催となり、主に欧州から研究者や産業界、政府機関関係者ら約150人が参加した。主催者のチェコ水素技術プラットホーム(HYTEP)は同国の水素経済発展を目指して設立された組織で、現在、水素ビジネスに関心のある85超の企業などがメンバーとなっている。

今回のテーマは「水素―政治からビジネスまで」。同会議初日の19日は、水素経済や、水素バリューチェーンの構築、中・東欧の再生可能エネルギー(再エネ)由来の水素生産など、幅広い分野で活発な議論が行われた。

水素の普及に向けては、複数の専門家からオフテイカー(大口需要家)の不足やコストの低減が主な課題として挙げられた。また、水素分野での主な取り組みも紹介された。韓国水力原子力(KHNP)は、政府と産業界が協力してクリーンエネルギーへの移行を進めていく必要性を強調する中で、2024年9月にHYTEPと原子力エネルギーを活用した水素技術開発とビジネス協力のための情報交換にかかる覚書(MOU)を締結したことを紹介した。

オランダのガス輸送、貯蔵などのインフラ会社ガスニーは、同国北部に所在する同社の液化天然ガス(LNG)ターミナルをチェコ電力(CEZ)が使用して、チェコにLNGを輸入している事例を紹介し、水素についても同様の協力可能性があることに言及した。

チェコでは2021年7月に国家水素戦略を策定し、2024年7月に政府が改定版を承認した。改定版は3段階で構成されており、2030年までの第 1 段階では、グリーン水素(再エネ由来の水素)の生産と消費が連動した水素バレーを創出することに重点を置いている。2030 年までに年間約2万トンのグリーン水素を生産することが目標で、そのためには400メガワット時(MWh)の容量を持つ水電解装置が必要となる。続く第 2 段階 (2030~2045年)では、欧州全体の水素パイプラインネットワークを使用してグリーン水素の輸入を確保すること、第3段階(2045年以後)では、チェコで新たに開発された技術を使用して、再生可能で低炭素の水素を生産することが想定されている。

チェコでは、かつて石炭鉱業が主要産業だった3地域(カルロビ・バリ州、ウースチー州、モラビア=シレジア州)を中心に、脱炭素化、その中での水素活用に向けたプロジェクトが進行しつつある。

(宮川嵩浩)

(チェコ)

ビジネス短信 82e3b31a09eeaecf