2月の米ISM製造業景況感指数は低下、トランプ政権の関税政策が受注や価格などに大きく影響
(米国)
ニューヨーク発
2025年03月04日
米国サプライマネジメント協会(ISM)は3月3日、2月の製造業景況感指数を発表した。製造業景況感指数は50.3と、前月から0.6ポイント低下し、ブルームバーグの市場予想(50.6)を下回った。基準値である50はなお上回っているものの、関税引き上げに伴うコスト上昇懸念を受けて受注や雇用が低下するなど、前月まで見られていた回復の兆しは大きく減退し、ネガティブな内容が多くなっている。
項目別では、指数の構成要素のうち新規受注(48.6)、雇用(47.6)が再び50を下回った。生産(50.7)は基準値をわずかに上回っているものの、前月から低下した。今回、総合指数が基準値を上回った主な要因は供給(54.5、注1)によるものだが、これは「港湾ストや追加関税の可能性を見越した顧客からの早期納入依頼にサプライヤー側が苦慮する中、誰が現状の関税を負担するかを供給側と企業間で交渉し、納期が遅れたため」と説明されており、この指数が本来意図している需要増による配送遅延のようなポジティブな要因による上昇ではない。また、指数の構成要素以外では、仕入れ価格(62.4)が前月(54.9)から大きく上昇したことが注目される。鉄鋼・アルミニウム・銅など関税政策の影響を受けやすいカテゴリーや、プラスチック、天然ガスなど第2次トランプ政権下で見込まれる規制緩和に関連するカテゴリーなどで価格が上昇しているもようだ。業種別では、景況感が拡大と回答した業種は全体で10業種、産出額の大きい6業種(注2)では4業種だった(注3)。
ISM製造業調査委員会のティモシー・フィオレ会長は結果について、「需要は減退し、生産は安定化、企業が新政権の関税政策による最初の運用ショックを経験する中で人員削減は続いた。関税への懸念により価格上昇が加速し、新規発注の積み残し、サプライヤーの納品停止、在庫への影響が発生している」として、トランプ政権による関税政策が今回の結果を大きく左右する要因になったとの見方を示した。
企業からのコメントにも、「関税政策をめぐる不確実性のため、顧客は新規発注を停止している」(輸送機器)、「鉄鋼・アルミニウムに対する関税引き上げに伴う市場の不確実性のため、顧客は長期的な取引量をコミットすることにとても消極的になっている」(一次金属)など、関税政策による受注への影響を指摘する声が目立つ。トランプ政権はさまざまな関税措置を検討中で、関税政策の影響を懸念する受注控えの動きは当面続く可能性が高そうだ。
(注1)50を上回ると供給スピードの遅延、50を下回ると改善を示す。供給スピードの遅延は商品の動きの多さを示すので、指数として景況の良さを表す。
(注2)商務省発表の2023年第4四半期(10~12月)から2024年第3四半期(7~9月)までのGDP数値に基づき、産出額の大きい6業種の化学、輸送機器、コンピュータ・電子製品、食品・飲料・たばこ、一般機械、石油・石炭製品を指す。
(注3)拡大したと回答した業種は、石油・石炭製品、その他製造業、一次金属、木材製品、食品・飲料・たばこ、電気機器、化学、プラスチック・ゴム製品、金属加工、輸送機器。減少したと回答した業種は、家具、繊維、非鉄金属、コンピュータ・電子機器、一般機械。
(加藤翔一)
(米国)
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