欧州委の人材育成政策「技能同盟」、中小企業団体から職業教育への注力を求める声も
(EU)
ブリュッセル発
2025年03月24日
ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は3月5日、欧州委員会が同日発表した政策文書「技能同盟(Union of Skills)」(2025年3月14日記事参照)を歓迎した(プレスリリース)。
ビジネスヨーロッパによると、EU域内に住む15歳の子供のうち、約30%は必要最低限の数学力を習得しておらず、また約25%は読解や科学の学習に困難を抱えている。そこで、同政策文書で基礎技能からSTEM(科学、技術、工学、数学)分野まで、あらゆる教育段階における技能取得に力を入れるとした点を評価した。また、域内で適材適所の人材を確保するため、デジタル証明書を活用し、技能、資格の相互認証を促進する方針も支持した。
欧州中小企業連合会(SMEunited)は同日、「技能同盟」は必要な技能を持つ人材確保に向けた重要な一歩だが、中小企業に対応する具体策が必要と述べた(プレスリリース)。具体的には、職業教育・訓練(VET)機関は進学先として不人気だが、卒業者の多くが早期に安定した職を得て、大卒者より収入が高いという統計結果を紹介。社会のVETに対する見方を変え、キャリア選択の1つにつながるよう、根拠に基づいた公的キャンペーンの実施を提唱した。また、「経営者でもあり労働者でもある」中小企業の事業主が業務に支障なく柔軟に取り組める技能訓練や、従業員に対するOJT(オンザジョブトレーニング)など、中小企業に特化した技能習得の機会拡充を訴えた。
SMEunitedの3月7日付のプレスリリースによると、欧州中小企業の20%が人材不足や労働者の技能不足に直面している。産業競争力の維持には中小企業が必要な人材を確保できることが必須と訴え、教育政策においてEUは直接的な権限を持たないため、権限のある加盟国ならびに教育機関と企業が協力し、「技能同盟」の諸政策を推進するよう呼びかけ、各国での中小企業のニーズを反映した教育・技能取得関連の取り組みの進展に期待を示した。
(滝澤祥子)
(EU)
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