関税障壁の高まり受け、2025年成長率を下方修正、OECD予測
(世界)
調査部国際経済課
2025年03月19日
OECDは3月17日、最新の「世界経済見通し中間報告」を発表し、2025年の世界経済の成長率(実質GDP伸び率)を3.1%、2026年を3.0%と予測した。前回(2024年12月)予測から、2025年は0.2ポイント、2026年は0.3ポイントの下方修正となった(添付資料表参照)。OECDは世界経済が減速する理由について、「G20の幾つかの経済圏で貿易障壁が高まり、地政学的・政策的な不確実性が増していることが投資と家計支出の足かせになっている」とした。インフレ率は経済成長の鈍化に伴って緩やかになるものの、前回の予測より高くなると予測した。G20のコアインフレ率は2025年2.6%、2026年2.4%と予測し、いずれも0.3ポイント上方修正した。コアインフレ率は2026年、米国を含む多くの国で中央銀行の目標値を上回るとした。
主要国・地域別で見ると、米国、カナダ、メキシコでは、関税率の引き上げが実施されるにつれて成長が鈍化すると予測した。米国は2025年に2.2%、2026年に1.6%と、前回見通しからそれぞれ0.2ポイント、0.5ポイントの下方修正となった。カナダは2025年、2026年ともに0.7%と、前回見通しからそれぞれ1.3ポイントの下方修正だった。メキシコは景気後退が予測され、2025年はマイナス1.3%、2026年はマイナス0.6%とし、前回見通しからそれぞれ2.5ポイント、2.2ポイント下方修正した。ユーロ圏の成長率は2025年に1.0%、2026年は1.2%で、いずれも前回見通しから0.3ポイント下方修正となった。ユーロ圏については、関税措置による直接的な影響は少ないが、地政学的・政策的不確実性の増大が成長を抑制する可能性が高いと見込む。中国は2025年に4.8%、2026年に4.4%の予測で、2025年は前回から0.1%の上方修正、2026年は据え置きとした。2025年は関税引き上げの影響が政策支援強化によってほぼ相殺されるが、2026年には相殺効果が薄れ、経済が減速すると予測した。
同見通しは、世界経済のさらなる分断化を重大な懸念事項としている。OECDのマティアス・コーマン事務総長は「貿易制限措置の強化は生産と消費の両面でコスト上昇の一因となるだろう。ルールに基づく国際貿易システムを確保し、それを機能させ、市場を開かれた状態に保つことが引き続き不可欠だ」と訴えた。また、OECDは各国・地域の中央銀行に対し、貿易コストの上昇が物価上昇圧力を押し上げる可能性があることから、引き続き警戒を呼びかけた。
今回の予測は、中国と米国の間で発表された関税引き上げと、米国が鉄鋼とアルミニウムに対する25%の追加関税を維持することを前提としている。加えて、カナダ・米国間とメキシコ・米国間の2国間関税が4月以降、ほぼ全ての輸入品に対して25%引き上げられるシナリオに基づいている。OECDは下振れリスクとして、国際貿易に対する障壁が急増すると、ベースライン予測に盛り込まれた関税変更の悪影響が増幅され、企業による投資が予想以上に弱まる可能性を指摘した。なお、米国が全ての国からの非コモディティー商品に対して10%の一律関税を賦課し、他国も米国に対して報復関税を応酬するシナリオでは、世界の成長率は3年後までにさらに0.3ポイント押し下げられるとしている。
(馬場安里紗)
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