リスク高まるも、世界経済は底堅く成長、OECD予測

(世界)

調査部国際経済課

2024年12月09日

OECDは12月4日、最新の「世界経済見通し外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表し、2024年の世界経済の成長率(実質GDP伸び率)を3.2%、2025年と2026年はいずれも3.3%と予測した。前回(2024年9月)予測から、2024年は据え置き、2025年は0.1ポイントの上方修正となった(添付資料表参照)。「世界経済は、大きな課題にもかかわらず、底堅さを維持する」と分析した。ヘッドラインインフレ(総合インフレ率)は、多くの国で中央銀行の目標に戻りつつあることを指摘。また、世界貿易は回復基調にあり、2024年通年の貿易量は3.6%の増加が予測されている。

主要国・地域別では、米国は、実質賃金の上昇に下支えされた個人消費の伸びにより、GDP成長率は堅調に推移。2024年に2.8%、2025年に2.4%と、前回見通しからそれぞれ0.2ポイント、0.8ポイントの上方修正になった。ユーロ圏の成長率は、2024年に0.8%、2025年は1.3%で、2024年について前回見通しから0.1ポイント上方修正し、2025年は据え置きとなった。実質家計所得の回復、労働市場のタイト化(需要の増加)、政策金利の引き下げなどが押し上げ要因となる。中国は、2024年に4.9%、2025年に4.7%と予測し、2025年については前回から0.2ポイントの上方修正した。2024年第3四半期のGDP成長率は、輸出の増加に支えられた工業生産の伸びによって持ちこたえたが、消費者需要は依然として低調で、不動産セクターの調整も長引いている。

OECDのマティアス・コーマン事務総長は、(1)インフレ圧力の持続的抑制とのバランスを確保した金融緩和政策、および(2)将来の財政支出圧力に対応する財政政策の再構築、を必要な政策行動として挙げた。金融政策に関しては、日本を除く先進国において政策金利の引き下げを継続することが推奨されている。また、コーマン事務総長は「生産性と成長基盤を高めるために、教育とスキル開発の取り組みを強化し、企業投資に対する過度に厳しい規制を撤廃し、構造的な労働力不足の増大に対処しなくてはならない」と指摘した。

OECDの同見通しは、ここ数カ月で貿易政策の不確実性が急上昇している点を指摘。主要国の輸入制限措置が増え続ける中、「世界的な貿易制限のさらなる拡大は輸入価格を押し上げ、企業の生産コストを引き上げ、消費者の生活水準を低下させる」と警鐘を鳴らした。

(板谷幸歩)

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