先進自動車バッテリーカンファレンス、米ラスベガスで開催
(米国)
ニューヨーク発
2024年12月23日
「先進自動車バッテリーカンファレンス(AABC)」が12月9~12日、米国ネバダ州ラスベガスで開催された。主催者はエネルギー貯蔵分野のイベント組織のケンブリッジエネルテック。参加登録者数は約1,500人で、スポンサーにはバッテリー関連企業をはじめ約60社が名を連ねた。期間中は、約170社が出展する展示会と、230人以上の登壇者によるセミナーが同時開催され、活発な議論が行われた。AABCには、催事名のとおり、バッテリーの素材、製造装置、サービス分野での先進技術に携わる企業が参加し、完成車やバッテリーメーカーの研究開発段階からの事業参画を狙う。
展示会では、2023年に続き、ジェトロがバッテリーの素材や製造装置などを扱う日系企業8社を取りまとめて日本ブースを出展。バッテリーの長寿命化や急速充電に対応した各種新素材、米国では初展開のバッテリー生産設備など、今後の技術提携や部品供給の道筋を作ることを目的とした。参加した企業からは、「さまざまな新事業領域の創出ポテンシャルを見つけることができた」「日本ブース出展者同士の会話も非常に有意義で、今後のコラボレーションの可能性も同時に感じた」「展示会としての規模は大きくなかったが、特定の分野に絞った展示会だったので、個々の商談の質がほかの展示会に比べて高かったように感じた」といったコメントが寄せられた。
セミナーでは、自動車メーカーやバッテリーリサイクル企業の幹部らが登壇。ゼネラルモーターズ(GM)のカーク・ケルティ・バッテリーセル・パック部門副社長は「電気自動車(EV)市場の伸びは緩やかになっているものの、依然成長している分野。バッテリー生産に関しては、生産量の調整をしながら、韓国のバッテリーメーカーLGと協力し、米国内を中心に進めていく」と発言した。人件費などコスト高は否めないが、輸入に伴う輸送コストやそのほかのリスクを考慮すると、米国内でのサプライチェーン構築はより有益だ、とみている。また、スウェーデンのバッテリーメーカーであるノースボルトの米国での破産申請(注)に関し、「非常に残念だ。バッテリー事業はとても難しい。GMは当初よりLGという専門家との提携に基づいて事業展開を行ってきたが、これが大きなアドバンテージとなっている。1社単独で進めることは到底考えていない」と述べ、他社との提携が重要であることを強調した。
(左写真)(左から)GM、フォード、レッドウッドマテリアルズの幹部、(右写真)展示会場の様子(いずれもジェトロ撮影)
セミナーではまた、バッテリーのリサイクルにも焦点が当てられた。レッドウッドマテリアルズ(本社:ネバダ州)のコリン・キャンベル最高技術責任者は、バッテリーリサイクル材の輸送の際に大量の二酸化炭素(CO2)が排出されるため、同社では一連の生産プロセスを集約させた拠点を設置するとし、2022年に同社が発表していた正極材の生産が可能なサウスカロライナ州の新拠点の操業を2025年に実現させる、との進捗を発表した。
(注)2024年11月21日に米連邦破産法11条の適用を申請した。
(大原典子)
(米国)
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