EPAの救済規定、具体的相談事例について解説

(世界、日本)

調査部調査企画課

2024年12月25日

ジェトロは12月18日、ウェビナー「EPAの救済規定、相談事例から解決策を探る」を開催した。このウェビナーでは、経済連携協定(EPA)を利用している実務者を対象に、知っていると便利な原産地規則の救済規定を重点的に解説したほか、ジェトロに寄せられた相談事例を基に、日常の貿易業務で生じるつまずきやすいポイントと、その対処法を紹介した。

ウェビナー前半では、ジェトロ調査部の中畑貴雄主任調査研究員が原産地規則の救済規定にある僅少の非原産材料(デミニマスルール)や内製部材のロールアップ、複数国間の協定に特徴的な積送基準などについて解説した。

例えば、デミニマスルールは、品目別規則(PSR)で定める関税分類変更基準(CTC)を満たすことができない非原産材料でも、それが一定額・量を下回る場合には無視してよいという規定だ(注1)。こうした規定を利用すると、EPA特恵税率を利用するための原産地規則を満たしやすくなる。

また、実務者の関心の高いテーマである輸入国税関による検認に対する考え方について、検認を恐れる必要はなく、重要なのはいつ検認があってもいいように、必要な資料を準備しておくことだと強調した。検認には一定の回答期間が設けられており(注2)、実際に確認依頼があった際には、必要に応じてジェトロや税関に相談しながら進めてほしいと伝えた。

後半パートでは、貿易投資相談課の石川雅啓課長代理がジェトロに寄せられたEPAに関する相談事例を紹介した。12月15日に発効した英国との環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、2024年12月17日記事参照)利用時には、品目別原産地規則、譲許表、輸入申告で用いられる関税分類番号(HSコード)がそれぞれ異なる(注3)ことに留意すべきなどと紹介した。

同ウェビナーは1,400人以上が視聴し、質疑応答パートでは、必要資料の記載方法や積送基準に関して、また、2025年1月1日から可能となる地域的な包括的経済連携(RCEP)協定で韓国へ輸出する際の自己申告制度の利用PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)などについて、具体的な質問が多く寄せられた。なお、ウェビナーの様子はアーカイブ動画から見ることができる。

(注1)地域的な包括的経済連携(RCEP)協定や、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)など、日本が締結している多くのEPAでは、関税分類変更基準を満たさない非原産材料の価額の合計が産品の価額(FOB価額)の10%以下の場合は無視できると規定されている。

(注2)例えば、CPTPPでは少なくとも30日間(「TPP11解説書」134ページ参照PDFファイル(14.3MB))、日EU・EPAでは3カ月間の回答期間が認められており(「日EU・EPA協定解説書」97ページ参照PDFファイル(6.3MB))、輸入国税関による書面での検認要求を受けた輸出者、生産者、輸入者は必要な書類の準備をすることができる。

(注3)CPTPPの協定年版は2012年版のHSコードのため、原産性判定はこれを用いて行われる。一方、英国の譲許表は2021年9月1日時点の英国の品目分類(the tariff nomenclature)に基づいて表示されると規定があり、その時点(2021年)で有効なHSコードは2017年版だ。さらに、英国に限らず、輸出入申告には常に、最新のHSコード(現在は2022年版)が利用される。

(加藤遥平)

(世界、日本)

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