米小売り大手の第3四半期決算、高所得者層含め節約志向根強く、年末商戦の見通しは軟調
(米国)
ニューヨーク発
2024年11月21日
米国小売り大手のターゲットは11月20日、2024年第3四半期(8~10月期)の決算を発表し、純売上高が前年同期比0.9%増の252億2,800万ドル、営業利益は同11.2%減の11億6,800万ドルだった。同社のブライアン・コーネル最高経営責任者(CEO)は利益が減少した理由について「裁量支出カテゴリーに長引く軟調さ」に加え、10月の東海岸港湾ストライキに備えた準備コストを指摘した(NBCニュース11月20日)。同社は7月に大型セールを実施したことに加え、顧客の購入頻度が高い商品を値下げしたことで、第2四半期(5~7月期)には米国の既存店売上高が5四半期ぶりに増加し、業績の好転を示唆していた(2024年8月23日記事参照)。しかし、取扱商品の半分以上が裁量的商品であることや、アマゾンなどの競合他社よりも価格が割高な点が集客の低下につながっているとみられる。
一方、米国小売り大手ウォルマートが11月19日に発表した第3四半期(8~10月期)の決算では、純売上高が前年同期比5.4%増の1,680億300万ドル、営業利益も8.2%増の67億800万ドルだった。同社によると、増収要因の多くは世帯年収が10万ドル以上の高所得世帯によるもので、この層が第3四半期の市場シェア増加の75%を占めた(CNN11月19日)。また、2025年度通期(2024年2月~2025年1月)の売上高は前年比4.8~5.1%増(従来予想:3.75~4.75%増)と見込み、2024年で3度目の上方修正となった。
インフレの影響で2024年の年末商戦での売上高は前年を上回る見込みだが、伸び率は2018年以降で最も小幅にとどまる見通しだ(2024年10月17日記事参照)。インフレは緩和傾向にあるものの、消費者はより安価なセール品を買い求める傾向が顕著になっており、個人消費の先行きに注目が集まっている。
これに加え、米国のドナルド・トランプ次期大統領が公約に掲げる関税引き上げへの懸念や、東海岸の湾岸労使交渉による再度のストの可能性の影響で、インフレが再燃して消費財価格が再び上昇する新たな懸念が漂っている。
小売り各社の間では、トランプ次期政権の関税案に懸念が広がっており、自動車部品のオートゾーンやコロンビア・スポーツウエアは、実際に関税引き上げが実施された場合には、消費者に価格転嫁をせざるを得ない状況に陥ると警告した。また、フットウエアメーカーのスティーブ・マデンは、2025年中の中国からの輸入品削減幅を従来目標の10%から40%に引き上げた(ブルームバーグ11月7日)。ピーターソン国際経済研究所(PIIE)によると、トランプ氏による全般的に20%、中国には60%をかけるという関税計画は、米国の典型的な中間家庭層に年間約2,600ドル以上の負担をもたらす可能性があると推定している。
(樫葉さくら)
(米国)
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