ムーディーズ、ブラジルの信用格付けを「Ba1」に引き上げ

(ブラジル)

サンパウロ発

2024年10月04日

米国格付け大手のムーディーズは10月1日、ブラジル長期国債の格付けを「Ba2」から「Ba1」に引き上げた(注)。見通しは「ポジティブ」で、投資適格級まであと1段階となった。

ムーディーズは格上げの理由として、工業とサービス業の好調によりGDP成長率が予想を上回ったこと(2024年9月17日記事参照)、ビジネス環境の改善につながると期待されている税制改革の実現(2024年3月21日付地域・分析レポート参照)などを挙げている。また、活発な労働市場と高水準な実質賃金により、今後も国内需要の上昇と幅広い経済成長の継続が見込まれるとしている。

一方、公共支出を抑え、政府財政の均衡を目指す政策が導入されたものの(2023年9月7日記事参照)、ムーディーズは、定められた財政目標の維持に向けた政府の能力に対して懸念を表明している。財政均衡策が強化された場合、格付けをさらに引き上げる可能性があると説明している。

10月1日付の現地紙「バロール」によると、今回の格付け引き上げは多くのアナリストにとって予想外だった。米バンク・オブ・ニューヨーク・メロン傘下の投資マネジメント会社ARXのチーフエコノミスト、ガブリエル・バロス氏は同紙のインタビューで「(今回の決定は)理解できない。財政の状況は明らかに悪化している。このことは十分に考慮されなかった」と批判的な意見を示した。一方、投資マネジメント会社ウォーレン・インベスティメントスのチーフエコノミストのフェリペ・サルト氏は10月2日付の現地紙「エスタード」のインタビューで「ムーディーズの決定に驚く必要はないと思う。確かに財政の面で問題は多いが、国には債務超過のリスクがないと認めざるを得ない」と述べた。

(注)ムーディーズの格付けは、AaaからCまでの21段階で構成され、「Ba1」は11番目の格付けで投機的など級に分類される。投資適格級とされるのは10番目の「Baa3」以上から。ムーディーズは2009年9月にブラジル長期国債格付けを初めて投資適格級最低の「Baa3」に引き上げた。2011年6月に「Baa2」に引き上げ、2015年8月に再び「Baa3」に引き下げた。2016年2月には「Ba2」に引き下げ、今回の発表までそのまま据え置いていた。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル)

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