2025年の中央政府予算内の1,000億元を前倒し支出、内需拡大へ
(中国)
北京発
2024年10月16日
中国国家発展改革委員会は10月8日に開催された国務院の記者会見で、経済成長の促進に向けた一連の政策について説明を行った。
同委員会の鄭柵潔主任は当面の経済情勢について、世界の主要経済体は成長の原動力が弱いことや、貿易保護主義が強まっていることなど、不確実で不安定な要素が増加し、経済の押し下げ圧力が強まっていると指摘した。
その上で、経済を持続的に回復させるため、既存政策を効果的に実施するとともに、(1)マクロ政策の逆周期的な調節(カウンターシクリカル、注1)の強化、(2)有効需要の拡大、(3)企業への支援強化、(4)不動産市場の下げ止まりと安定化、(5)資本市場の活性化といった5つの側面から具体的な措置を講じるとした。
(2)では、消費について、大規模な設備更新と消費財買い替え政策(注2)により、家電製品や自動車の消費が拡大しているとした上で、消費拡大に向けて関連政策を強化するとしたほか、介護、保育などのサービス消費を拡大するとした。
また、投資については、予定されている各種投資資金を十分に運用すること(注3)のほか、2025年は引き続き超長期特別国債を発行し、「2つの重要」建設(注4)への支援を強化するとした。また、2024年内に2025年の中央政府予算内の1,000億元(約2兆1,000億円、1元=約21円)を前倒し支出する投資計画と、1,000億元の「2つの重要」建設プロジェクトリストを確定し、プロジェクトの着工を支援する。さらに、地方特別債(専項債)を資本金として利用できる対象分野、規模、比率の拡大について研究を急ぎ、利用範囲の拡大に関する改革措置を早期に打ち出すとした。
(4)では、「ホワイトリスト」(注5)プロジェクトへの融資を強化し、地方特別債などによる遊休地の活性化を推進し、住宅在庫の解消を加速するとした。
なお、中国人民銀行(中央銀行)は9月24日、預金準備率と政策金利の引き下げ、住宅ローン金利の引き下げと住宅ローン頭金比率の調整など各種金融政策を発表している(2024年10月2日記事参照)。
(注1)周期的な経済の変動を緩和する調節。
(注2)中央政府の各部門、各省・市レベルで打ち出している詳細な政策については、ジェトロの特集「中国の設備更新と消費財買い替え推進政策の最新動向」を参照。
(注3)同委員会の劉蘇杜副主任による投資の現状についての説明によると、2024年の中央政府予算の7,000億元(約14兆7,000億円、1元=約21円)の投資は既に実施されており、関連投資プロジェクトの着工率が58%となった。1兆元の超長期特別国債のうち、「2つの重要」建設に充てた7,000億元の投資については、既に実施され、関連プロジェクトの着工率は50%となった。発行が予定されている3兆1,200億元の地方特別債については、9月末までに2兆8,300億元が発行済みで、関連プロジェクトの着工率は85%となった。
(注4)重要な国家戦略の実施と重点分野での安全保障能力の建設を指す。
(注5)各地方政府が策定した融資に適したプロジェクトのリストを指す。金融機関はリストに基づき、プロジェクトの進展や担保、財務などの状況を評価した上で、積極的に融資を実施していく。
(張敏)
(中国)
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