ドローバック制度の関税払戻率の見直し議論始まる

(ペルー)

リマ発

2024年10月29日

ペルー政府は、輸出奨励を目的とした輸入財の関税払戻(ドローバック)制度について、2025年8月1日以降、関税払戻率を現行の3%から引き下げる方針を示した(2024年10月23日付大統領令197-2024-EF外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。政府は当初、関税払戻率を10月25日から2025年6月30日まで1%、2025年7月1日から2025年12月31日まで0.5%とし、2026年1月1日から払い戻しを行わない方針を打ち出した(2024年10月18日付大統領令189-2024-EF外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。制度を見直す背景には、税収を確保したい経済財務省(MEF)の狙いがある。

ところが、産業界の反対を受けた政府は、産業界と協議の上、10月18日に発表した方針を変更し、今後、官民合同の作業部会を設置して、ドローバック制度の在り方を検討することを決めた。作業部会は2025年3月末までに答申をまとめる予定だ。ドローバック制度が変更される場合、ペルーに工場を有して近隣諸国へ輸出している進出日系企業に影響が及ぶ可能性があり、今後の行方に注目が集まっている。

ペルー経団連(CONFIEP)、ペルー輸出業組合(ADEX)、ペルー工業組合(SNI)、リマ商工会議所(CCL)など、発言力のある団体を含む10の経済団体が連名で、翌10月19日に反対声明を発表した。声明では、ペルー経済は復活途上の段階にあり、ドローバック制度の見直しに適した時期ではないと指摘。非伝統産品の輸出は直接・間接を合わせて400万人の雇用を生み出しており、ドローバック制度の見直しは国際競争力の低下につながるとした上で、唐突なかたちでの政府の制度変更にさらに反対すると強調している。

加えて、地元経済紙「ヘスティオン」紙は10月21日付記事で、通商観光省(MINCETUR)、農業灌漑省(MIDAGRI)はドローバック制度見直しに反対し、ディナ・ボルアルテ大統領に方針を変更するよう呼びかけを試みたと報道した。関税払戻率を現行の3%から引き下げる方針を示した経済財務省(MEF)との認識に差があったことが明らかになっている。

ドローバックは、輸出品製造に用いるために輸入した材料に係る関税納付額が払い戻される制度。同製品の輸出FOB価格(コミッションなど経費を除く)の50%未満で、年間輸出額が所定の上限額を超えない場合、輸出業者や製造者が申請すると、FOB価格の3%相当払い戻される制度。同制度はペルーの産業競争力の強化のため、非伝統産品の輸出奨励策として、アルベルト・フジモリ政権時の1995年に制度化された。

(石田達也)

(ペルー)

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