プーチン大統領がモンゴル訪問、エネルギー開発など政府間協定を締結

(モンゴル、ロシア)

北京発

2024年09月12日

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が9月2日から3日にかけてモンゴルを訪問し、モンゴルのオフナー・フレルスフ大統領と公式会談を行った。フレルスフ大統領は、ハルハ川戦争(注1)戦勝85周年、モンゴルとロシアの合弁企業であるウランバートル鉄道(注2)公社の設立75周年、両国の国交樹立100周年祝賀行事の一環として、プーチン大統領のモンゴル訪問に謝意を表明した(注3)。

両首脳は両国の協力関係の現状を評価し、燃料、エネルギー、道路交通、環境、文化、教育、医療、人道などの分野の協力強化について議論した。また、石油製品供給の協力、第3火力発電所(注4)の拡張・更新プロジェクトの設計と予算策定に関する政府間協定が締結された(添付資料表参照)。

会談でフレルスフ大統領は、エグ川水力発電所(注5)の建設が双方の努力の結果進んでいることを指摘した。両国は同プロジェクトに特段の注意を払い、環境アセスメント問題を包括的に検討するための2国間作業部会を設置することで合意し、覚書を締結した。

また、双方は、2024年末に締結予定のモンゴル・ユーラシア経済連合(EEU)間の暫定FTA(自由貿易協定)が両国間の貿易の法的枠組みを拡大し、新たな協力の機会を創出することへの期待を表明した。

両国はさらに、モンゴル、ロシア、中国の経済回廊の建設(注6)を促進することが重要だと同意し、3カ国の関連機関が時代のニーズと要件に沿って関連プロジェクトを更新していることを前向きに評価した。

会談後の共同記者発表で、フレルスフ大統領は「モンゴルは平和を尊重し、独立的で開放的な全方位外交方針の枠組みの中で、隣国ロシアとの協力をさらに拡大・発展させることに尽力している。モンゴルは各国の歴史、文化、文明、国益、発展の道筋からもたらされる多元性を尊重し、全方位外交の原則に基づいた国際関係の構築に努めており、世界情勢における国連の中心的役割と調整をさらに強化することを一貫して支持している。従ってわが国は、国際的な困難や誤解は相互理解と相互信頼、相互尊重、対話を通じて克服され、国際法規範の枠組みの中で解決されるべきと考えている。それゆえ、われわれの永遠の隣国であるロシアが世界の平和、安全保障、持続可能な開発、人類の幸福のための偉大な事業でリーダーシップを発揮し、世界の国々の信頼、相互尊重、協力の強化に貴重な貢献をしてくれると確信している」と述べた(注7)。

(注1)日本ではノモンハン事件として知られている。

(注2)北のロシア国境から、南の中国国境までを結ぶ鉄道。

(注3)通常の国賓待遇では、モンゴル大統領府・外務省の公式発表で「フレルスフ大統領の招待により」という語句が含まれるが、今回の公式発表には、招待があったか否かについては明記されていない。

(注4)社会主義時代にソ連の支援によって首都ウランバートル市に建設された電熱併給型石炭火力発電所。モンゴル民主化以降もロシアの支援で数度にわたって改修・拡張が行われている。

(注5)モンゴルからロシアに流入するセレンゲ川の上流にあるエグ川に水力発電所のダムを建設することについて、ロシア側がセレンゲ川の水量減少やバイカル湖の水位低下などの環境に与える影響を懸念していたことにより、ロシア側の賛同が得られずに長年停滞していた。モンゴルでは、国内の電力供給不足と世界的な脱炭素の流れの中で、石炭火力発電所以外の選択肢として、水力発電所を建設する必要性に迫られている。

(注6)ロシアの「大ユーラシアパートナーシップ」、中国の「一帯一路」、モンゴルの「草原の道」という各構想の枠組みの中で、モンゴル経由でロシアと中国を結ぶインフラ(道路、鉄道、送電線、ガスパイプライン)の開発を推進するプログラム。

(注7)国際刑事裁判所(ICC)がプーチン大統領の逮捕状を出しており、ICC加盟国のモンゴルには逮捕義務があると報じられているが、共同記者会見では、この点について触れられなかった。

(藤井一範)

(モンゴル、ロシア)

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