米中国特別委員長、ジョージア工科大による天津大との提携解消を歓迎する声明発表
(米国、中国)
ニューヨーク発
2024年09月12日
米国連邦議会下院の「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委員会)」は9月10日、ジョン・ムーレナー委員長(共和党、ミシガン州)による、ジョージア工科大学と天津大学ジョージア理工深セン学院(GTSI)との提携解消を歓迎する声明を発表した。ジョージア工科大学は2016年12月に、天津大学、深セン市政府と、同市にGTSIを設立する契約を締結していた。
ジョージア工科大学は全米有数の理系大学で、同大学の研究所は国防総省と協力して安全保障上の課題を解決することを目的の1つとしている。2024年1月にはジョージア工科大学と天津大学が世界初の機能性グラフェン半導体の開発に成功したと発表した。中国特別委によると、この研究は、国防総省が資金を提供するジョージア工科大学の研究機関の支援を受けて実施された。機能性グラフェン半導体は、高度な自律型兵器システムやサイバー活動などに用いる量子コンピューティング能力に応用される可能性があるほか、米国による先端半導体の対中輸出規制(2024年4月8日記事参照)を打ち破ることを可能にする技術として重要だと中国メディアが伝えているという。
天津大学は軍事利用可能な米国企業の企業秘密の窃盗を十数件行ったと信じるに足る合理的な理由があるとして、2020年12月に輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リスト(EL)に掲載されている。ELには、米国の国家安全保障または外交政策上の利益に反する行為に携わっている、またはその恐れがあると判断された事業体が掲載される。他方、ジョージア工科大学も2020年と2021年にGTSIでの研究プログラムのために、中国から数百万ドルを受け取ったとされているが、同大学が十分に情報開示しているか疑問があるとされている。こうしたことから、中国特別委は2024年5月にジョージア工科大学に対して、情報公開を求める書簡を送っていた。その後ジョージア工科大学は9月6日、GTSIへの参加中止を決定したと発表した。
ムーレナー委員長は声明で「ジョージア工科大学が米国の国家安全保障を優先し、米国政府のブラックリストに載った天津大学とのパートナーシップのGTSIの閉鎖という責任ある決断をしたことを称賛する」と述べた上で、「中国の教育機関と同様の取り決めをしているほかの米国の高等教育機関が細心の注意を払い、米国の長期的な国家安全保障に与える影響について真剣に考えることを期待している」として、ほかの大学や研究機関にも注意を促した。米国政府は機微技術の流出防止に注力しており、企業だけではなく、学術機関に対する注意喚起も積極的に行っている(2024年8月16日記事、2024年9月11日記事参照)。
(赤平大寿)
(米国、中国)
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