アジア大洋州で最大級の水素関連見本市がブリスベンで開催

(オーストラリア)

シドニー発

2024年09月30日

水素関連見本市「Asia-Pacific Hydrogen Summit & Exhibition 2024外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(注1)が91213日に、オーストラリアのブリスベンで開催された。主催者のSustainable Energy CouncilSEC)によると、同見本市は水素に特化したイベントとしてはアジア・大洋州において最大級の規模だ。2回目となった今回の見本市では、150以上の政府機関(団体)・企業が出展し、オーストラリア国内だけでなく日本・ドイツ・韓国・中国などから3,000人超が来場した。日本からは荏原製作所、川崎重工業、トヨタ自動車、日機装、富士電機、三井住友銀行の6社が出展した。

写真 展示ホールの様子(ジェトロ撮影)

展示ホールの様子(ジェトロ撮影)

同見本市はサミットエリアと展示エリアに分けられ、サミットでは各国政府・団体関係者約20人、企業などから70人による講演が催され、400人以上が聴講した。会期2日目には、同会場においてオーストラリア連邦政府の気候変動・エネルギー・環境・水資源省より2019年に策定された国家水素戦略の改定版となる「オーストラリア国家水素戦略外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が発表され、話題を呼んだ。

展示エリアでひと際にぎわいを見せていたのは、オーストラリア連邦政府とクイーンズランド州政府による水素製造プロジェクト「Central Queensland Hydrogen Project(CQ-H2)」(注2)のブースだった。2023年6月1日から「Front End Engineering and Design (FEED)」(注3)が開始されたこともあり、同ブースに来場した企業からは具体的なインフラ・機器調達などに関する熱心なディスカッションが交わされていた。

写真 にぎわいを見せるCQ-H2ブース(ジェトロ撮影)

にぎわいを見せるCQ-H2ブース(ジェトロ撮影)

また展示エリア内には、「H2 Techシリーズプログラム」と題したセミナー会場も設置され、地場企業だけでなく、荏原製作所、ENEOS、東レなど日本企業も登壇、自社製品・サービスを紹介した。

写真 H2 Techセミナー会場(ジェトロ撮影)

H2 Techセミナー会場(ジェトロ撮影)

オーストラリアは、グリーン水素・アンモニア製造に必要な再生可能エネルギー資源に恵まれ、化石燃料に替わるエネルギー源としてこれらの製造・輸出拠点として期待が寄せられている。来場・出展した日本企業からは、オーストラリア連邦政府および各州政府による実証プロジェクトのさらなる推進や、価格差支援を通じた、案件具体化に向けた市場環境の整備に対する強いイニシアチブに期待する声が聞かれた。オーストラリアのグリーン水素価格差支援策「ハイドロジェン・ヘッドスタート」(2023年7月27日付地域・分析レポート参照)の第1ラウンドのプロジェクトが2024年内に選定される予定となっている。また、第2ラウンドも今後、公募される予定。

次回の同見本市は2025年11月20~21日にシドニーで開催予定。

(注1)2024年の概要は、連邦政府貿易投資促進庁のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(注2)クイーンズランド州政府が所有する電力企業スタンウェルと岩谷産業をはじめとする複数の日系企業による、日本市場向けのグリーン水素・アンモニアの生産・輸出プロジェクト。クイーンズランド州中部のグラッドストーン港から液化水素を輸出するため、大規模なグリーン水素生産施設と同港における液化プラントの開発に関する研究を行っている。

(注3)Front End Engineering and Design(FEED)とは、実現可能性調査(FS)や開発概念設計で決定された事業計画に沿って、設計・調達・建設(EPC)作業前の技術的課題の抽出や概略費用検討を行い、基本設計(工事図、配管図など)を行うこと。

(青島春枝、飯塚南)

(オーストラリア)

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