ハリス米副大統領、2026年のUSMCA見直しを米労働者を守るために利用すると発表
(米国、メキシコ、カナダ)
ニューヨーク発
2024年09月30日
11月の米国大統領選挙の民主党候補カマラ・ハリス副大統領は、2026年に行われる米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直しについて、米国の労働者を守るために利用するとの声明を発表した。ミシガン州デトロイトの地元メディアが9月26日に報じた。
同メディアが報道したハリス氏の声明によると、トランプ前政権によって交渉されたUSMCAによって、「あまりにも容易に」企業が米国外に生産活動を移転し、米国から雇用を失わせたと非難した。ハリス氏はUSMCA批准承認に反対した連邦上院議員10人のうちの1人だとし、USMCAは米国の労働者を守るには不十分だと指摘した(注1)。その上で、協定文で定められている2026年のUSMCA見直しプロセスを活用して、こうした懸念に対処するとした。USMCAは発効してから6年後に見直しを行い、参加する3カ国が合意すれば、さらに16年間継続すると定められている。仮に合意に至らなければ、協定は10年間有効となり、その間、参加国は引き続き見直しと修正の交渉を行うことができる。
他方、USMCAの完成車の原産地規則(ROO)は、域内原産割合(RVC)が純費用方式(NC)で75%以上であることに加え、主要部品が全て域内原産品であることなど、他の自由貿易協定(FTA)に比べて類を見ないほど厳しく設定されている。さらに、直接工の賃金(時給)が16ドル以上の地域での付加価値が40%以上といった要件もあり、USMCAによる関税撤廃メリットを享受するためには、参加国の中でも賃金の高い米国での生産や加工を促す内容となっている(2019年5月8日付地域・分析レポート参照)。今回の声明では、詳細については示しておらず、今後、ハリス氏の具体的な見直し方針が明かされるかが注目される(注2)。
なお、今回の声明は、ドナルド・トランプ前大統領が9月27日にミシガン州で選挙集会を行う前に報道された。声明全体としては、全米自動車労働組合(UAW)に対して、ハリス氏への支持を訴える内容となっている。
(注1)USMCAの批准承認に際して、ハリス氏は主に環境条項の不備を主張していた(2024年9月6日付地域・分析レポート参照)。
(注2)米国では現在、安価な中国製の電気自動車(EV)流入に対する懸念が高まっており、対抗措置の一環として、USMCA見直しでのROOの厳格化といった議論もある。詳細は2024年6月28日記事参照。
(赤平大寿)
(米国、メキシコ、カナダ)
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