対中貿易は促進の方向も、タイ産業界から中国製品の流入に懸念の声
(タイ、中国)
バンコク発
2024年09月09日
タイ商業・工業・銀行合同常設委員会(JSCCIB)は8月7日、中国に対する貿易赤字について懸念を表明した。JSCCIBによると、2024年上半期の中国からの輸入は前年同期比7.1%増の375億7,000万ドルに増え、対中貿易赤字は15.7%増の199億7,000万ドルに拡大した。流入する中国製品はタイの幅広い業界に影響を与えている。特に中国の電子商取引(EC)プラットフォームを通じて、中国の工場から安価な製品がタイの消費者に直接届く取引形式となっており、タイの中小零細企業が製品価格やコストの面で競争に負ける事態が起こっている。
この件に関連し、JSCCIBは輸入製品がタイの基準認証を満たしているかを厳格に確認するよう求めた。また、密輸品への対処や国内での民商法について厳しく運用し、タイの中小企業やサプライヤーが競争力をもって、持続的に潜在力を発揮できるような環境づくりを政府に対して求めた。
商務省の貿易政策・戦略事務局(TPSO)も、対中貿易赤字について懸念を示している。同局としても輸入製品が規格や安全・環境基準を満たしているか厳格に管理するとともに、輸入税を確実に徴収するよう働きかけているという(8月29日付「バンコク・ポスト」紙)
こうした問題を解決するため、タイ商工会議所貿易委員会は、タイ・中国商業会議所や在タイ中国大使館と、タイ・中国ビジネス持続性センター(TCCBS)を共同で設置し、両国の国内法や国際的ルールに基づいた貿易・投資の係争の解決策を模索していく方針だ。
貿易協力は深める方針
産業界から対中輸入の増大に懸念の声が出ている一方、政府は中国との貿易協力は深めていく方針を崩していない。商務省は7月30日に中国商務省と第3回貿易投資小委員会をバンコクで開催しており、両国間の貿易投資拡大のために議論を行っている。貿易拡大に向け、ASEAN中国FTA(ACFTA)と地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の利用を促進することで合意した。また、9月に南寧で開催される中国ASEAN博覧会(CAEXPO)や、11月に上海で開催される中国国際輸入博覧会(CIIE)に、タイとして積極的に参加していくことを表明した。
タイ側は中国向け農産品の輸出増を求めており、新たに生きた牛やスネークフルーツの輸入を許可することや、タイ産米の輸入量の拡大、雲南省シーサンパンナ・タイ族自治州にある関累港(メコン川の上流に位置)での貿易円滑化を求めた。同州には、プームタム・ウェーチャヤチャイ副首相兼商務相が4月に訪問しており、タイ産の生きた牛や冷凍牛肉をタイ北部チェンライ県のチェンセーン港から輸出したいとの意向を示した。中国税関総署(GACC)に対し、食肉処理施設と低温倉庫の設置を要望している。
(北見創、シリンポーン・パックピンペット)
(タイ、中国)
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