サステナブルエレクトロニクス分野で協力、ジェトロがオランダ研究機関を山形に招聘

(山形、オランダ)

イノベーション部エコシステム課

2024年09月13日

ジェトロは9月1~5日、山形大学、米沢市と連携し、山形へのサステナブルエレクトロニクス分野の対日投資や協業連携を目的に、オランダの研究機関などを招聘(しょうへい)した。ジェトロの「地域エコシステムへの外資誘致プログラム」(注1)の一環で、同プログラムを活用した招聘は東北地方では初となる。

今回、オランダの研究機関TNOホルストセンター外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注2)、同センター発のスタートアップのトラクソン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますフォノンテック外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから計4人を招き、地元企業との商談会やワークショップ、山形大学の研究施設の視察などを行った。

山形大学は、プリンテッド&フレキシブルエレクトロニクス(注3)の基礎研究から実用化までの研究開発拠点として、約15年以上にわたりオープンイノベーションを推進してきた。同分野は、膨大な工程や薬品などを必要とする従来の電子回路パターンの形成方法と異なり、印刷技術でフィルムなどに電子回路パターンを直接形成するため、環境負荷低減の観点から、サステナブルエレクトロニクスとして注目されている。

日本全国から約130人が参加したワークショップでは、大学研究者や関連企業が一同に会し、サステナブルエレクトロニクスの技術や重要性を議論するとともに、試作品技術の展示を行うなど、TNOホルストセンターなどとの活発な交流が行われた。また、山形大学のほか、国内の化学メーカーやLED照明メーカーなど9つの企業・団体が参加した個別商談会では、研究・開発での協業などの可能性を探るべく、延べ26件の商談の場が設けられた。商談に参加した日本企業は「自社の技術をアピールしたところ、オランダ側からサンプルの提供依頼があった。今後の連携開発につなげるため、引き続きコンタクトしたい」と連携に向けて意欲を示した。

写真 基調講演を行う参加者(ジェトロ撮影)

基調講演を行う参加者(ジェトロ撮影)

写真 研究成果を説明する研究者(ジェトロ撮影)

研究成果を説明する研究者(ジェトロ撮影)

今回のプログラムを主導した山形大学の高橋辰宏教授は「これからのサステナブルエレクトロニクス分野のサプライチェーンは、技術的な面を含めて、日本だけでは完結できない。山形大学が日本とオランダの研究機関と企業をつなぐゲートウエーになれれば」と語った。また、TNOホルストセンターからは、「商談会やワークショップには多くの企業に参加してもらい、感銘を受けた。今後、山形大学と共同研究や人材交流に関する連携協定の締結に向けて進めていきたい」とのコメントがあった。

山形大学はかねて、世界初のノートパソコン開発に貢献するなど、有機エレクトロニクス分野の先進的な研究が世界的に評価されている。今回の招聘を機に、日本とオランダ間の連携による研究開発や協業が一層進展するなど、同分野で山形での新たなエコシステムの形成が期待される。

(注1)ジェトロによる、地域のエコシステム関係者と連携し、外国・外資系企業の国内地域への誘致や国際協業連携を推進するプログラム。

(注2)オランダの研究機関TNO(応用科学研究機構)と、ベルギーの半導体エレクトロニクスの研究機関imec(アイメック)が共同で2006年に設立したプリンテッド&フレキシブルエレクトロニクスの実用化を目指す研究所。オランダ・アイントホーフェン市に位置し、世界から約60社が参加。20カ国以上から約200人の研究者・スタッフが勤務している。

(注3)ソリッドフレキシブル基板に対して、導電性・半導体・絶縁性インクなどの印刷技術を用いて電子回路やデバイスを製造する技術。フレキシブルエレクトロニクスは、基板に相当するものが折り曲げることができるもの。

(高橋凌太)

(山形、オランダ)

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