米主要港、7月小売業者向け輸入コンテナ量は前月比8.1%増、東海岸の港湾スト懸念で輸入増続く
(米国)
ニューヨーク発
2024年09月12日
全米小売業協会(NRF)と物流コンサルタント会社ハケット・アソシエイツが発表した「グローバル・ポート・トラッカー報告」(9月9日)によると、7月の米国小売業者向けの主要輸入港(注1)の輸入コンテナ量は前月比8.1%増、前年同月比で21%増の232万TEU(1TEUは20フィートコンテナ換算、添付資料図参照)となった。8月時点の予想(2024年8月13日記事参照)を下回ったが、7月単月として過去最高の水準を記録した。今後の見通しについても、8月は前年同月比20.9%増の237万TEUと、2022年5月(240万TEU)以来の高水準、9月も同13.8%増の231万TEUとなると見込んでいる。その後、10月は同1.0%増の208万TEU、11月は同1.6%増の192万TEU、12月は同1.1%増の189万TEUと、おおむね1%前後の伸びとなり、貨物取扱量は徐々に落ち着く見通しだ。
ハケット・アソシエイツ創設者のベン・ハケット氏は発表で、「輸入水準は東海岸とメキシコ湾岸での港湾ストライキの可能性の懸念によって影響を受けている」と述べ、「一部の荷主は出荷を前倒しし、6月から9月にかけての輸入を増加させている」ことが同期間中の取扱量の増加の背景になっていると指摘した。さらに、「一部の輸入業者は、特に11月の大統領選挙前後に予想される関税引き上げ(2024年5月15日記事参照)の影響を受ける可能性のある中国からの輸入の前倒しを検討している」とも付け加えた。8月の雇用統計(2024年9月9日記事参照)では、小売業では1万1,100人減と、3カ月連続で減少するなど低調に推移し、消費が減速していることを示唆する一方で、運輸・倉庫業は増加を維持しており、両者の動きには齟齬(そご)が見られるが、こうした運輸部門での労働需要や貨物量の増加は一時期的な特殊要因によって押し上げられているもようだ。
懸念されているストライキに関しては、国際港湾労働者協会(ILA、注2)と米国海運連合(USMX)の間で結ばれている現行の労働協約が9月30日に満了を迎える。両者は新たな労働協約の締結に向けて協議を行うため、9月4~5日に会合を開いたが、賃金などの問題での対立から正式交渉に至らず(2024年9月9日記事参照)、組合員らは要求を満たす新たな労働協約の締結が実現しない場合には、10月1日にストライキを行うことを全会一致で表明した。
ILAは、米国東海岸とメキシコ湾岸の36港で働く4万5,000人の港湾労働者を代表し、全米の港湾荷役の半分近くを取り扱っている。米国政府の支援を受けた非営利団体マイターはストライキの範囲をニューヨークとニュージャージー港での30日間に限定した場合でも、1日当たり6億4,100万ドルもの経済損失をもたらす可能性があると試算している(CNBC9月5日)。
USMXの会員で海運大手のマースクも、顧客に対し、労使契約が決着しない限り、ニューヨーク/ニュージャージー、ヒューストン、ジョージア州サバンナを含む各港でストライキが起こる可能性が日に日に高まっていると警告している。同社は「米国東海岸やメキシコ湾岸で一般的な業務停止が発生した場合、1週間の操業停止でも回復には4~6週間かかる可能性があり、大幅な滞貨と遅延が日を追うごとに深刻化する」との懸念を示した(ロイター9月10日)。
(注1)米国西海岸のロサンゼルス/ロングビーチ、オークランド、シアトル、タコマ、東海岸のニューヨーク/ニュージャージー、バージニア、チャールストン、サバンナ、エバーグレーズ、マイアミ、ジャクソンビル、メキシコ湾岸のヒューストンの各港を指す。
(注2)USMXは米国東海岸とメキシコ湾岸の港湾労働の雇用主を、ILAは同労働者を代表する。
(樫葉さくら)
(米国)
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