8月の米消費者物価指数、前年同月比2.5%に低下も、コア指数は足踏み
(米国)
ニューヨーク発
米国労働省が9月11日に発表した8月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年同月比2.5%(前月2.9%上昇)と大きく鈍化した。他方、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は同3.2%上昇で、前月と同じ伸び率だった。前月比では、CPIは0.2%上昇(前月0.2%上昇)、コア指数は0.3%上昇(前月0.2%上昇)だった(添付資料図1、表参照)。前年同月比ではCPI、コア指数ともに市場予想と一致し、前月比ではコア指数が市場予想(0.2%上昇)をわずかに上回った。エネルギー価格の低下を受けてCPIは低下したものの、住居費などの粘着質な項目が足かせとなり、コア指数の伸びの低下は足踏みがみられる結果となった。
品目別に前年同月比でみると、ガソリン価格の低下に牽引されエネルギーが4.0%低下(前月1.1%上昇)し、CPI低下の大きな要因となった。食料品は2.1%上昇と、前月(2.2%上昇)からほとんど変化なかった。
エネルギーと食料品を除いたコア指数のうち、衣料品が0.3%上昇(前月0.2%上昇)で、低い水準で推移したほか、中古車が10.4%低下(前月10.9%低下)し、財部門は1.9%低下(前月1.9%低下)だった。消費の緩やかな減速を受けた財価格の下押し圧力は継続しているもようだ。
サービスは4.9%上昇と、前月から変わらなかった。物価のうち3割のウエートを占める住居費は5.2%上昇(前月5.1%上昇)で、わずかに伸びが加速した。賃料は5.0%上昇(前月5.1%上昇)と、わずかに伸びが鈍化した一方、帰属家賃(注)が5.4%上昇(前月5.3%上昇)し、わずかに伸びが加速した。また、輸送サービスが7.9%上昇と、前月(8.8%上昇)よりも鈍化したことなどを受け、住居費を除くサービス価格は4.3%上昇(前月4.6%上昇)と、伸びが鈍化している(添付資料図2参照)。
8月はコア指数の低下に足踏みがみられたが、労働市場の減速も考慮すると、連邦準備制度理事会(FRB)による利下げは事前の予想どおり、9月から開始されるとの見方が強い。もっとも、住居費の低下が一進一退の状態となっていることや、8月の雇用統計(2024年9月9日記事参照)で、単月ながら賃金の伸びがやや上昇したことなど、インフレの低下ペースはなお予断を許さない状況にあり、利下げ幅は25ベーシスポイント(bps)にとどまる可能性が高そうだ。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の調査では、9月11日時点で87%が9月の連邦公開市場委員会(FOMC)での25bpsの利下げを予想している。
ブルームバーグエコノミクスのアンナ・ウォン氏らは今回の結果を受けて、「輸送費が上昇しているにもかかわらず、商品価格が引き続き下落していることは、企業が投入価格の上昇を消費者に転嫁するのに苦労していることを示唆している。企業がコスト削減のためにレイオフに頼る可能性や、この先のさらなる利幅の縮小を予感させる」と指摘した(ブルームバーグ9月11日)。今後のインフレ低下の内容次第では、雇用や実質賃金など米国の消費を支える要素にマイナスの影響を及ぼす可能性もあるため、低下ペースのみならず、その内容にもより注意を払う必要がありそうだ。
(注)自己が所有する住宅(持ち家住宅)に居住した場合、家賃の支払いは発生しないものの、通常の借家や借間と同様のサービスが生産され、消費されるものと仮定して、それを一般の市場価格で評価したもの。
(加藤翔一)
(米国)
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