米税関、台湾籍漁船の水産品の輸入差し止めを撤回、人権状況是正受け
(米国、中国、台湾)
ニューヨーク発
2024年08月16日
米国税関・国境警備局(CBP)は8月14日、台湾籍の漁船(Yu Long No.2)が漁獲した水産品の米国への輸入を差し止める違反商品保留命令(WRO)を撤回したと発表した。これにより、同日以降に同漁船が漁獲した水産品の輸入が再び認められるようになった。
CBPは、強制労働・児童労働・囚人労働などを利用して生産された物品の輸入を禁じる1930年関税法第307条に基づいて、輸入される物品に強制労働などの関与が推定される場合、WROを発令して当該物品の輸入を差し止める権限を有する。CBPは2020年5月に、同漁船の操業中にILOの強制労働の指標に当てはまる状況があったとして、同漁船が漁獲した水産品および漁獲した水産品を使用して生産された製品に対してWROを発令した。
今回のCBPの発表によると、同漁船はWROの発令以降に、強制労働の指標に当てはまる状況の是正に向けたさまざまな行動を講じた。CBPのトロイ・ミラー局長代行は声明で、「本日の同漁船に対するWROの撤回は、人権のための新たな勝利であり、CBPの強制労働に関する取り締まりが効果を上げていることを示すものだ」「CBPは今後も、あらゆる場所で労働者の権利を守るための取り組みを続けていく」と述べた。
今回のWROの撤回により、発令中の有効なWROは51件となった(注1)。うち4件が特定の漁船が漁獲した水産品に対するものとなっている。
今回のWRO撤回とは対照的に、中国の新疆ウイグル自治区などが関与する物品の輸入を原則禁じるウイグル強制労働防止法(UFLPA、注2)では、中国の水産品に対する監視が強化されている。CBPを所管する国土安全保障省(DHS)は2024年6月に、中国の水産加工品メーカーをUFLPAに基づく輸入禁止対象の事業者リストに追加掲載した(2024年6月12日記事参照)。さらに、DHSは7月に、水産品をUFLPAに基づいて優先的に差し止めなどの措置を講じる分野に追加指定した(2024年7月11日記事参照)。
(注1)国・地域別には中国が36件で最多を占める。直近では、CBPは2024年4月に、中国企業が製造する作業用手袋に対して、製造工程での人権侵害の疑いに基づいて新規のWROを発令した(2024年4月15日記事参照)。
(注2)UFLPAの概要や動向はジェトロの特集「ウイグル強制労働防止法」を参照。
(葛西泰介)
(米国、中国、台湾)
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