ニュージーランド、実験室以外の遺伝子組み換え技術利用禁止規制を廃止へ
(ニュージーランド)
シドニー発
2024年08月23日
ニュージーランドのジュディス・コリンズ科学・イノベーション・技術担当相は8月13日、約30年間禁止してきた実験室以外での遺伝子組み換え技術など遺伝子技術の利用規制を廃止すると発表した。政府は、そのための法案を2024年内に議会へ提出する。また、法案には、遺伝子技術の利用を監督する規制機関の設立も盛り込む。コリンズ科学・イノベーション・技術担当相は、2025年末までに法案を成立させ、規制機関の運用開始を目指すとした。
政府は、同規制の廃止はヘルスケアや気候変動対策の分野、ニュージーランド固有の自然保護などの課題解決や、農業生産性の向上や輸出促進につながる遺伝子技術(遺伝子組み換え技術)の産業利用を見込み、遺伝子技術を利用する研究者や企業に対して革新的な製品や技術の開発や商業化を可能にするものだと説明した。ニュージーランドでは、遺伝子技術が長年利用されているものの、国内の規制が技術革新に対応したものとなっていなかった。2024年8月13日付公共放送ラジオニュージーランド(RNZ)によると、連立与党の1つであるACT党の科学・イノベーション・技術担当スポークスパーソンのパルミート・パルマー氏は、現在の規制が不合理な例として、「研究者が赤い果肉のリンゴを開発したが、国内ではそのリンゴを試食することが認められていなかったため、代わりに米国で試食しなくてはならなかった」と説明した、と報じている。
そうしたことを背景に、連立与党の第1党の国民党は、「バイオテクノロジーの活用(Harnessing Biotech)」を公約として掲げており、遺伝子技術への規制を廃止するとしていた。さらに、連立政権の2024年第3四半期(2024年7月~9月)行動計画においても、古い規制を廃止し遺伝子技術を安全に利用するための新たな規制の導入が盛り込まれていた。
新しい法案は、オーストラリアの2000年遺伝子技術法(Gene Technology Act 2000)に調和した内容で作成される予定で、オーストラリアと同様、環境や人体などへのリスクが高い遺伝子技術の利用は規制対象とする一方、リスクが最小限の特定の遺伝子技術の利用は規制の対象外とする「ハイブリッド・アプローチ」を導入することが検討されている。
(青島春枝)
(ニュージーランド)
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