英首相がドイツ訪問、関係深化に向けた2国間条約の交渉開始を発表
(英国、ドイツ、フランス)
ロンドン発
2024年08月29日
英国のキア・スターマー首相は8月28日、ドイツを訪問し、オラフ・ショルツ首相と会談した。会談後の共同声明の中で、両国間で新たな2国間条約の交渉を開始することを発表した。今後6カ月間で交渉を行い、2025年初頭の合意を目指すとしている。
条約には次の項目などにつき、両国間での協力拡大に向けた内容が盛り込まれる予定とされている。
- 市場アクセス
- 科学・イノベーション、テクノロジー
- クリーンエネルギー
- 北海周辺での取引
- サプライチェーンの強靭(きょうじん)性
- エネルギー安全保障
- 生物多様性
- 環境
声明では両国で共通する優先事項として、上記の項目以外にも、安全保障などの分野における外交政策、産業変革、不法移民への対応、若者・教育、輸送・インフラなどが挙げている。また、NATO加盟国として、欧州・大西洋地域での抑止・防衛能力の維持に向けて取り組むとしたほか、ロシアによるウクライナ侵攻の抑止とウクライナへの支援についてもコミットするとした。会談に合わせて行われたスターマー首相の記者会見でも、防衛に関する協定が条約の核となるとコメントした。同首相は中東情勢にも言及し、地域全体の緊張の沈静化や政治的解決に向けた協力の重要性などについて合意したと述べた。
英国は防衛に関する協力枠組みとして、2010年にフランスとの間でランカスターハウス条約に署名している。英国政府は今回のドイツとの新条約によって、英・ドイツ・フランス3カ国が主要な地政学的課題で足並みをそろえて協力することができるとしている。
スターマー政権はEUとの関係再構築に向けて取り組みを進めており(2024年6月28日付地域・分析レポート記事参照)、同じくEU主要国であるフランスについても、29日にエマニュエル・マクロン大統領と会談を行う予定としている。
(山田恭之)
(英国、ドイツ、フランス)
ビジネス短信 4e722f654127a87f