米アイオワ州、妊娠6週目以降の人工妊娠中絶を原則禁止
(米国)
ニューヨーク発
2024年07月12日
米国アイオワ州の最高裁判所は6月28日、胎児の心拍が確認できるとされる妊娠6週目以降の人工妊娠中絶を禁止する「ハートビート法」の合憲性が問われた件で、ほぼ全面的に認める判決を下した。ただし、アイオワ州の米国自由人権協会(ACLU)によると、人工妊娠中絶が禁止されるには、最終的な判断を下すために地方裁判所に戻す必要があるため、少なくとも21日はかかるという。
アイオワ州では、2018年にも同様に人工妊娠中絶を禁ずる法案が可決されていたが、裁判所によって施行が止められた。その後、あらためてほぼ同じ内容の法案が2023年7月に議会で可決され、キム・レイノルズ知事(共和党)が同月に署名していた。だがその際も、全米で人工妊娠中絶を含むヘルスケアサービスを提供する非営利団体プランド・ペアレントフッドなどが差し止め命令を求める申立書を同州の最高裁に提出したことにより、法案の施行が引き延ばされていた。
レイノルズ知事は州最高裁の判決と同日、声明文を発表し、「生命ほど神聖な権利はなく、罪のない胎児ほどわれわれが最も強く擁護するに値するものはない」「州最高裁がアイオワ州民の意思を支持したことをうれしく思う」と述べた。ただし、体外受精(IVF)については、「われわれは養子縁組の促進やIVFの保護など、家族の強い結びつきを奨励する政策を引き続き展開していく」とも述べた。
ジョー・バイデン大統領は同日、「アイオワ州の最高裁判所は本日、極端で危険な人工妊娠中絶禁止法の施行を認める判決を下した。これでアイオワ州は、共和党選出の議員によって、女性の健康と生命を危険にさらす人工妊娠中絶禁止法が施行された22番目の州となった」とし、「カマラ・ハリス副大統領も私も、女性はどの州においても、自分の個人的な健康上の判断は自分で行う権利を持たなければならないと考えている。われわれは、連邦法におけるロー対ウェイド判決の保護を回復するよう議会に求め続け、共和党の選出議員が米国人の基本的自由をくつがえそうとする努力に断固として立ち向かう」と声明を発表した。
人工妊娠中絶権の是非は、有権者が2024年の大統領選挙で重要視している課題の1つとなっており、全米では人工妊娠中絶の権利を支持する割合が上昇している(2024年5月17日記事参照)。
(吉田奈津絵)
(米国)
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