6月の米CPI、前年同月比で前月より大きく鈍化、前月比で4年ぶりのマイナスとインフレ抑制で進展

(米国)

ニューヨーク発

2024年07月12日

米国労働省が7月11日に発表した6月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.0%上昇(前月3.3%上昇)、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は3.3%上昇(前月3.4%上昇)と、上昇率はいずれも鈍化した。前月比では、CPIは0.1%低下(前月横ばい)、コア指数は0.1%上昇(前月0.2%上昇)で、CPIの伸びは2020年5月以来約4年ぶりにマイナスに転じた(添付資料図1、表参照、注1)。なお、市場予測はCPIが前年同月比3.1%上昇、前月比0.1%上昇、コア指数が前年同月比3.4%上昇、前月比0.2%上昇で、いずれも市場予測を下回る結果となった。

品目別に前年同月比でみると、エネルギーは1.0%上昇(前月3.7%上昇)と上昇幅が大きく縮小、うちガソリンは2.5%低下(前月2.2%上昇)と6月のCPIの低下に最も寄与した。食料品は2.2%上昇(前月2.1%上昇)、外食は4.1%上昇(前月4.0%上昇)と、いずれも伸びが拡大した。エネルギーと食料品を除いた財は1.8%低下(前月1.7%低下)で、低下幅が引き続き拡大した。内訳では、中古車が10.1%低下(前月9.3%低下)、新車が0.9%低下(前月0.8%低下)と自動車関連の価格低下が寄与した。

エネルギーと食料品を除くサービスは5.1%上昇(前月5.3%上昇)と伸びが鈍化した。物価のうち3割のウエートを占める住居費は、帰属家賃(注2)が5.4%上昇(前月5.7%上昇)、賃料が5.1%上昇(前月5.3%上昇)といずれも鈍化した結果、5.2%上昇(前月5.4%上昇)と伸びが鈍った。また、輸送サービスが9.4%上昇(前月10.5%上昇)と前月よりも鈍化したことなどを受け、住居費を除くサービスも4.8%上昇(前月5.0%上昇)と6カ月ぶりに上昇幅が縮小した(添付資料図2参照)。

6月のCPI上昇率の低下は、ガソリン価格の低下による寄与が大きいものの、住居費やそのほかのサービス価格でも低下が見られるなど、総じて米国連邦準備制度理事会(FRB)が目標とする2%の物価安定目標に向けて、良好な進捗を示すものとなった。ブルームバーグエコノミクスのエコノミストであるアンナ・ウォン氏らが「6月のCPIの結果は5月の良好な指標よりもさらに1段階良いものであり、インフレの軌道に関する連邦公開市場委員会(FOMC)の自信を高めるはずだ。これにより、9月に利下げを開始する準備が整うはずだ」と指摘しているように(ブルームバーグ7月11日)、労働市場の軟化(2024年7月8日記事参照)と併せ、FRBが利下げに向けた検討を本格化する環境が整いつつあるといえる。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の調査では、今回の結果を受けて、9月利下げを予想する者が大幅に増加し8割を超えた。

今回の結果について、ホワイトハウスは声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。声明では、インフレ抑制の進捗を歓迎したほか、今後のバイデン政権の取り組みを挙げ、共和党の政策綱領(2024年7月9日記事参照)で示されたような経済政策を批判した。11月の大統領選でインフレが経済政策上の最大の争点となる中、インフレ抑制が順調に進むかは、政権の経済政策に対する説得力を左右する大きな要素にもなると考えられ、その進捗が注目される。

(注1)2022年7月の前月比0.01%の下落は横ばいと整理する。

(注2)自己が所有する住宅(持ち家住宅)に居住した場合、家賃の支払いは発生しないものの、通常の借家や借間と同様のサービスが生産され、消費されるものと仮定して、それを一般の市場価格で評価したもの。

(加藤翔一)

(米国)

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