ドイツ政府、中国製5G製品の排除をついに決定

(ドイツ、中国)

ベルリン発

2024年07月18日

ドイツ内務・地域省は7月11日、第5世代移動通信システム(5G)ネットワークで中国企業の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の製品を禁止することについて、ドイツの主要な通信事業者のドイツテレコム、ボーダフォン、テレフォニカとの間で合意したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

第1段階として、2026年末までに5Gコアネットワーク(注1)でファーウェイとZTEの重要コンポーネントの排除を義務づける。経済紙「ハンデルスブラット」(7月12日)によると、この要件は現時点でもほぼ満たされている。第2段階では、2029年末までに5Gアクセスネットワーク(注2)でファーウェイとZTEの5Gネットワーク管理システムの重要な機能の他社製品への置き換えを義務づける。

併せて、ドイツ政府と、全ての5Gネットワーク事業者、関連業界やメーカーが参加するフォーラムの設立も合意された。合意目標の実施と推進のための解決策を共同で検討するほか、オープンインターフェース、第6世代移動通信システム(6G)標準、ネットワーク保護、サイバーセキュリティーについても、広く議論していく。

高い中国依存度が5G巡る対応を困難なものに

ドイツ連邦政府は2023年7月に初の中国戦略を策定したものの(2023年9月4日付地域・分析レポート参照)、高い中国依存度を背景に、具体的な措置がほとんど講じられていないと専門家から批判されている。

5Gネットワークを巡る状況も同様で、5Gコンサルタント会社ストランド・コンサルトの調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、調査対象の欧州31カ国のうち、5Gネットワークに占める中国製品の割合が50%以上を占める国は8カ国で、ドイツは2022年時点で59%だった。

それにもかかわらず、現地報道によると、5Gネットワークにおける中国製品のリスクと強硬な姿勢を主張するナンシー・フェーザー内務・地域相(SPD)やアンナレーナ・ベアボック外相(緑の党)らと、中国製品なしでの5Gネットワーク拡充の困難さを主張するフォルカー・ビッシング・デジタル・交通相(FDP)などとの間で論争があり、具体的な措置を合意できずにいた。また、中国製品排除を命じた場合に、5Gネットワーク事業者が高額な損害賠償請求を行う可能性が指摘されていたことも、対応を困難にしていた。

この結果、今回合意された内容も、移行期間が当初の検討案から大幅に延びるかたちとなり、通信事業者には有利な一方で、リスクを過小評価しており、対応が遅すぎるとの批判もある(「ハンデルスブラット」紙7月12日)。

今回の発表に対し、在ドイツ中国大使館は、ファーウェイの機器がどの程度セキュリティー上のリスクをもたらすか、決定的な証拠を提示した国は今のところなく、全くの杞憂だとした上で、NATO首脳会議が開催されるタイミングでドイツ政府が今回の発表を行ったことはドイツ政府の意思決定の独立性を疑うなどとして遺憾の意を表明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしている。

(注1)通信事業者の保有するネットワークの中核部分で、交換機同士を結び、インターネットや他の通信事業者の通信網と接続する部分を指す。

(注2)通信事業者の保有するネットワークの末端部分で、基地局と端末を結ぶ部分を指す。

(日原正視)

(ドイツ、中国)

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