低炭素水素法案を可決、水素生産に必要な資機材購入や輸入に税制恩典
(ブラジル)
サンパウロ発
2024年07月19日
ブラジルの上下両院は7月11日、低炭素水素に関する国家政策を策定した2023年法案第2308号を可決した。同法案は、低炭素水素の定義や、水素の認証制度の成立、税制インセンティブ付与などの内容を含み、低炭素水素の生産を促進するものだ。
同法案では、低炭素水素は生産量1キログラム当たり水素生産プロセスで発生する二酸化炭素(CO2)が7キロ以下の炭素強度(注)を持つ水素と定義している。要件確認のための国内認証制度を設立する予定で、具体的な手続きは今後、連邦政府と州政府、水素関連事業者の共同で定める。ただし、認証制度への参加は任意となる。
税制インセンティブとして、2025年から2029年までにブラジル国内で低炭素水素生産計画を持つ企業は、水素生産計画で使用する機器や建設資材などの購入や輸入に際して、連邦社会保障負担金の社会統合基金(PIS)、社会保険融資負担金(COFINS)の減免措置が設けられる。また、2028年から2032年までに水素を生産する企業、あるいは水素を購入する企業にタックスクレジットが付与され、そのクレジットで連邦税の控除を受けることができる。ただし、連邦政府が設定する各年のクレジット総額には次の上限を設定している。2028年は17億レアル(約493億円、1レアル=約29円)、2029年29億レアル、2030年42億レアル、2031年45億レアル、2032年50億レアルを上限として、5年間で183億レアルのクレジットが付与される予定だ。
ブラジル工業連盟(CNI)と、ブラジル水素・持続可能燃料協会(ABHIC)、ブラジルグリーン水素事業者協会(ABIHV)は7月12日、それぞれの公式サイトで同法案の可決を評価した。CNIは「今回の可決は脱炭素化への大きな一歩となる。ブラジルにはカーボンフットプリントを削減し、製造業に付加価値を与えるグリーンエネルギーのポテンシャルが大いにある」と述べている。
(注)炭素強度とは、特定の活動やプロセスで発生するCO2の量を示す指標。例えば、1キログラムの水素を生産する際に排出されるCO2の量を測るために使われる。炭素強度が低いほど、その活動が環境に与える影響が小さいことを意味する。
(エルナニ・オダ)
(ブラジル)
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